樹脂切削加工のバリの発生過程と対策

そもそもバリはなぜ発生するのか

バリはプラスチックの切削加工では、切っても切れないような関係にあります。切削加工時にバリが発生ししたままだと、製品としての美観に悪影響を及ぼすだけでなく、寸法誤差や組み立て不良などを引き起こす可能性があります。プラスチックの切削加工では、特にバリが発生しやすく、事前の対処やバリ発生後の後処理がとても重要です。

プラスチックの切削加工で、どのようにバリが発生するのかについてや、バリの種類を紹介していきます。

プラスチック切削加工で発生するバリの種類とメカニズム

プラスチックの切削加工では、大きく分けて次の2つのバリが発生します。

  • ポアソンバリ
  • ロールオーバーバリ(引きちぎりバリ)
樹脂バリ取り

ポアソンバリは、切削工具が製品に食い込む際に発生するバリのことを指します。切削工具の圧力で製品側に歪みが起こり、押しつぶされるような形で起こるのが特徴です。工具の進入方向に発生するポアソンバリを「エントランスバリ」、工具の進入方向の側面に発生するポアソンバリを「サイドバリ」と区別する場合もあります。

もう一つがロールオーバーバリで、製品から切削工具が離れる際に発生する際に発生するバリを指します。刃物に押し出され、倒れ込むような形で発生します。ポアソンバリに比べてロールオーバーバリは大きく出やすいため、このロールオーバーバリの発生を抑えることが重要になってきます。

切削加工の場合は、いずれのバリも材料の塑性流動が原因で発生します。塑性流動はわかりやすくいうと材質の粘り具合です。柔らかい粘土にカッターなどの刃物で切り込みをいれたとき、粘土が歪んで角が立つのが想像できると思います。これと同じようなことがプラスチックの切削加工でも起こっているのです。

塑性流動を全く引き起こさない材質は存在しないため、この塑性流動をできるだけ引き起こさないことが大切です。

発生するバリを少なくするには

先程も解説したように、バリの発生はプラスチック素材の塑性流動が原因です。塑性変形を引き起こす大きな原因となっているのが刃の切れ味。刃の鋭さや摩耗具合で大きくバリの発生量は変わってきます。

一般的にプラスチックの切削加工では、金属の切削加工よりも刃先角度が鋭い(すくい角の大きい)刃物を使用します。金属加工に比べてプラスチックは柔らかく、刃物に強度はあまり必要とされないので、切れ味重視のほうが基本的には良い結果をもたらします。また、切れ味が良ければ切り屑と一緒に熱も逃がせるため、熱による材質の軟化も防げます。このような理由から、できればプラスチック専用とされている刃物を使用することをおすすめします。

刃物の選定に問題ない場合、刃物が摩耗している場合があります。摩耗していると切れ味が低下してしまい、材料を引っ張るような形になってしまってバリの発生が顕著になります。刃先の摩耗には常に目を配るようにしておきましょう。ルーペなどで刃先を見てみると丸くなっているので、こまめに確認してみてください。

加工する材質にもよりますが、クーラントを使用すると切削時に発生する熱を抑えられます。そのうえ、切り屑の排出や潤滑も促されるので、材質との相性が悪くなければ使用したいところです。

切れ味の鋭い刃物を利用していてもバリの発生が大きい場合は、切削条件が材質に適していない場合があります。プラスチックの場合、加工速度があまりにも遅すぎると、1ヶ所に熱が溜まりすぎて材料が軟化してしまいバリが発生しやすくなる場合もあります。反対に早すぎても、加工速度に切れ味が追いつかずに、材料を引っ張ってしまう形になってしまってバリが発生する場合も。加工条件は条件を少しづつ変えて様子を見ながら調整することがとても大切です。

発生したバリを除去する方法

どのように加工したとしても、多かれ少なかれバリは発生してしまいます。発生したバリを除去する工程をバリ取りと呼びますが、様々な方法があります。

  • 機械加工時に刃物で除去する方法
  • バリ取り用のブレード・ヤスリで除去する方法
  • ショットブラストで除去する方法
  • バレル研磨で除去する方法
樹脂 バリ原理

機械加工でバリを除去する方法では、マシニングセンタなどのNC加工機で、製品の加工が終わった段階で、エンドミルなどを用いてバリを除去する方法です。大量に生産する場合などでは、このような方法を用いると1工程でほとんどのバリ取りの作業が完了します。この方法は少量生産では加工データの作成に時間が掛かるため、あまり使用されません。

バリ取り用のブレードやヤスリで除去する方法では、一つ一つ手作業でバリを除去します。手間こそかかりますが、少量の生産であっても安価に行えるのが特徴です。作業者の熟練度でバリ取りの精度が大きく変わる点があるので注意が必要です。

ショットブラストやバレル研磨では、研磨石をバリに当てたり、製品ごと研磨石と混ぜ合わせることで、バリを削り取ります。バリだけを削るのではなく、全体的に研磨石を当てるため、製品全体が研磨される点には注意しなければなりません。また、研磨石が当たりにくい場所のバリの除去は難しくなっています。

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