PC(ポリカーボネイト)とは
PCは「ポリカーボネート」と呼ばれる熱可塑性樹脂で、エンジニアリングプラスチックに分類されます。日本ではポリカと略されて呼ばれることも多いようです。
自然色はガラスのように透明で、同じく透明なアクリル樹脂とともに有機ガラスと呼ばれます。PCはアクリル樹脂よりも透明度は劣りますが、はるかに強度が高いので使い分けが容易です。
PC(ポリカーボネイト)の特徴
PCが持つ特徴やメリット・デメリットについて見ていきましょう。
■メリット
- 耐衝撃性が高い
- 透明度が高い
- 耐候性に優れる
- 成形性に優れる
- 低温耐性が高い
■デメリット
- 有機溶剤・界面活性剤・アルカリに弱い
- 硬度が低く傷付きやすい
PCの最大の特徴は、その優れた耐衝撃性でしょう。衝撃に耐える能力は全プラスチック中でも最大です。ABSのおよそ5倍の耐衝撃性を持っており、大きなハンマーで叩いても割れないことから、警察のシールドの素材としてや防弾材料に採用されるほどです。
透明度も非常に高くなっており、可視光線透過率は80~90%とされています。透明度としてはガラスと同レベルです。そのため、耐衝撃性が求められる場面であっても内部を覗く窓が必要な場合に重宝されます。ただし、硬度が低いため、少し毛の硬いブラシ程度でこするだけでも傷が入ってしまいます。長期使用を考えるのであればコーティングを施し、表面硬度を高めてあげる必要があります。
PCは耐候性も高く、長期間の屋外使用でも耐えられるほどの耐久性を持っています。信号機の信号灯カバーのような屋外での用途であってもPCであれば長期間耐えられます。PCは吸水性と熱収縮が少なくなっています。そのため、成形加工に向いており、仕上がり精度も高く、安定した成形が可能です。低温に対する耐性が高く、-40℃程度まで耐えるとされています。そのため、寒冷地の屋外でも使用に耐えられるので、屋根材として波板などに加工され活躍しています。
強度面でとても優れているPCですが、薬品には強くはありません。特に有機溶剤や界面活性剤、アルカリには弱くなっています。一般的な接着剤には有機溶剤が含まれているため、PCは接着にも向きません。よくある失敗例としては、スプレー式のガラスコーティング剤をPCに噴射し、ひび割れや変形を起こしてしまったというようなものがあげられます。
高温高湿での環境では加水分解もしてしまうので、高温高湿度の環境下では使用しないほうがいいでしょう。
PC(ポリカーボネイト)の利用用途
PCは射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形などの成形加工に適応しています。そのため、量産加工の素材として利用されやすく、あらゆる分野で活躍しています。
カメラのレンズ
DVD・CDの基板
光ファイバー
メガネ・サングラスのレンズ
■電子機器
パソコンの筐体
カメラの筐体
スマートフォンの筐体
■家庭用品
スーツケース
筆記用具
除雪スコップ
飛行機の窓
車・バイクの前照灯などのカバー
バイク用ヘルメット
■防具など
警察の防護シールド
防弾ガラス
PC(ポリカーボネイト)の切削の注意点
PCは耐衝撃性には優れているものの、エッジ部分に欠けが生じやすくなっています。送り速度が高すぎたり、すくい角が大きすぎるとエッジ欠けが生じやすいので注意が必要です。
また、熱がたまりやすく、切り屑や切削面が溶け出してしまう場合があるので、切削油を使用したほうが良いでしょう。PCは吸水性が低いので、切削油は水溶性のものを利用しても問題ありません。熱がたまらないように冷却効果の高い切削油を使用したほうがいい結果を得られます。