PBT(ポリブチレンテレフタレート)とは
PBTは「ポリブチレンテレフタレート」と呼ばれる、熱可塑性のエンジニアリングプラスチックです。PBTは結晶性で白色。比重は1.31となっています。
PBTと非常によく似た材質にPET(ポリエチレンテレフタレート)があげられますが、両者の違いは、化学式の一部がブテン(PBT)かエチレン(PET)かというわずかな違いとなっています。性質も非常に似通っている両者ですが、PETは透明性を利用してペットボトルなどに、PBTは電気絶縁性などから電子機器などに使われています。
PBT単体でも加工され使われますが、多くの場合でガラス繊維などのフィラーを混ぜて使われます。これはフィラーを添加することで飛躍的に機械的強度が増すからです。
PBTが最初に開発されたのは1940年頃と言われています。それからしばらく経って、製造方法が広く認知され使われ始めたのが1970年。アメリカの「Celanese社」が「X-917」という商品名でPBTを販売し始めたのが広く認知されるようになったきっかけです。エンジニアリングプラスチックの中では登場は遅くなっています。
PBT(ポリブチレンテレフタレート)の特徴
PBTの特徴について、メリット・デメリットに分けて紹介していきましょう。
メリット
- 熱安定性が高い
- 寸法安定性が高い
- 電気絶縁性が高い
- 難燃性が高い
- 有機溶剤耐性が高い
- 価格が安い
デメリット
- 強アルカリに弱い
- 高温高湿度下で加水分解しやすい
PBTは、エンジニアリングプラスチックの中では最も優れた熱安定性を持ちます。通常グレードでフィラーを添加していないPBTであれば連続使用温度は120~140℃。ガラス繊維で強化したPBTであれば130~150℃となっています。
吸水率がPBTは低くなっており、吸水による寸法変化も少なくなっています。流動性も高く、熱収縮も少ないので、成形加工での寸法精度や加工性は非常に高く、成形加工との相性は抜群です。
また、電気絶縁性も高くなっているので、電子機器部品としての利用にも最適です。さらに、難燃剤を混ぜ込むことで、飛躍的に難燃性を高められ、自己消火性を持ったプラスチック素材にもなります。PBTのメーカーラインナップでも大抵の場合で難燃性グレードが存在します。
バランスのいい薬品耐性を持つPBTですが、強アルカリには弱くなっています。そのため、アルカリ溶液での使用はできる限り控えたほうがいいでしょう。また、高温高湿度下では、加水分解してしまうので、熱水やスチームなどの環境下での利用は避けましょう。
PBTは特別な性能を持っているプラスチック素材ではありませんが、バランスの取れた高い性能と低コストが主な魅力です。国内では年間10万トンも使用されており、多く利用されているプラスチック素材となっています。
PBT(ポリブチレンテレフタレート)の利用用途
PBTは優れた電気絶縁性能と機械的強度を活かして主に以下のようなシーンで利用されています。
■電気・電子分野
コネクタ/スイッチ/キーボード/電話機
■自動車分野
ドアミラー/排気ガス対策バルブ/リレー
PBT(ポリブチレンテレフタレート)の切削の注意点
PBTを切削加工する場合は、通常グレード、ガラス繊維強化グレードなどのフィラーの有無をチェックしておく必要があります。通常グレードの場合は、細かい部分でカケが発生しやすい傾向にあるので、切り込み量や深さの設定には注意を払いましょう。
ガラス繊維を添加している場合は刃物の摩耗が激しくなるので、荒加工と仕上げ加工の刃物を変えるなどして、切れ味のいい刃物での加工を心掛けてください。また、ガラス繊維を添加すると反りが発生しやすくなっています。反りを抑えたい場合は、アニール処理を行い内部応力を除去してから加工すると良質な結果を得やすいでしょう。