半導体に利用されるプラスチック製品・材質紹介

半導体関連で求められるプラスチック材料の性能

半導体は、あらゆるコンピューターや機械などに利用される現代の生活になくてはならない製品です。半導体は使用時に高温にさらされたり、高い電圧にさらされたりする過酷な環境下で利用されます。また、製造時にも様々な薬品が使われたり、真空中で処理されたりと製造時にも様々な負担が強いられてしまいます。そのため、半導体関連に利用されるプラスチック材料には次のような性能が求められます。
半導体業界
半導体部品
  • 耐熱性
  • 帯電防止性
  • 機械的強度
半導体製造プロセス
  • 低アウトガス性
  • 帯電防止性
  • 耐薬品性
  • 機械的強度

順番に見ていきましょう。

半導体イメージ

耐熱性

集積回路(IC)などを封止する際には、プラスチック材料がよく利用されます。半導体製品は、年々、より小型でより高性能なものが登場してきています。それに伴い、使用時に発生する熱が高温になり、半導体に使用するプラスチック素材のより耐熱性が要求されるようになってきました。

100℃以上での長期耐熱温度が求められるケースは非常に多くなっていますが、半導体製品の高性能化が進むことで長期耐熱温度が150℃~200℃以上を求められるケースも珍しくありません。

帯電防止性能

半導体製品は、静電気にとても弱く、わずかでも発生すると性能に悪影響がでる場合があります。一般的なプラスチック材料は、絶縁性を持っているものの、表面に静電気を蓄えやすい性質を持ったものが多くなっています。この対策として、導電しない程度に導電性のある添加剤を加えた「帯電防止グレード」の材料がよく利用されます。

低アウトガス性

半導体製品は、真空中でプラズマを発生させ、化学反応を用いた処理を行う場合があります。真空で処理を行う際にプラスチック材料の内部にガス化する物質があると、真空チャンバー内を目的の圧力まで下げることができない上、不純物が多い環境下での処理となってしまい、精度が落ちてしまいます。このような処理を行う場合は、材料にガス化する物質の量が少ない材料を利用する必要があります。

耐薬品性

半導体を製造する際には、薬品やプラズマを使ったエッチングを使用します。腐食されたくない場所を耐薬品性の高いプラスチック材料でコーティングすることで、加工精度の高いエッチングを確実に行うことができます。

その他、洗浄などの工程でも様々な薬品が使用されるため、それらに耐えられる性能が求められます。

機械的強度

半導体製造のプロセスで必要不可欠なウェハーの研磨では、研磨剤に対する摩耗や圧力に耐えるだけの機械的強度が求められます。また出来上がった半導体を安全に移動させるためのウェハーキャリアなどでも、外部からの衝撃から守るために機械的強度が必要です。

半導体関連で利用される代表的なプラスチック材料

半導体の製造や製造プロセスで利用されるプラスチック材料は、先程紹介したような性質を持ったものがよく利用されます。半導体関連で利用される代表的なプラスチック材料について見ていきましょう。

PTFE(テフロン)

テフロンは、ほぼすべての物質に反応しないという特徴があります。腐食性の高い薬品を使用する製造プロセスで主に活躍しています。利用される製品としてはパイプや容器、潤滑剤、冷却剤などがあげられます。

PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)

PEEKは、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性が非常にすぐれているため、シリコンウェハーの化学機械研磨処理(CMPプロセス)で利用されるリテーナーリングとして用いられます。

PI(ポリイミド)

耐熱性と耐衝撃性に優れており、薄膜での利用ができることからエッチング時の半導体回路の保護膜として利用されます。

エポキシ

エポキシは、集積回路などの封止に主に使用されます。優れた機械的強度と絶縁性などから、半導体を静電気や衝撃から保護する目的で利用されています。

半導体関連でプラスチック材料が利用される製品

続いて、半導体関連でプラスチック材料が利用されている製品について見ていきましょう。

半導体保護膜

半導体をエッチングする際や、半導体を複数積層させるような場合において保護膜としてプラスチック材料が利用されます。利用されるものの多くがPI(ポリイミド)で、エッチングに使用されるものは感光性のPIが利用されます。

モールディング

半導体を製品として実装する際、ホコリや衝撃、静電気などから守るために、半導体部分を樹脂で埋めて保護します。一般的にはエポキシ樹脂が利用されます。

リテーナーリング

リテーナーリングは、半導体を研磨する際の土台として利用される製品です。研磨剤などの薬品にさらされます。そのため、摩擦や圧力に耐えられるだけの機械的強度が必要とされる製品です。主にPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が材料として利用されています。

半導体洗浄装置

半導体の洗浄には、過酸化水素、アンモニア、硫酸、フッ酸、塩酸などの様々な薬品を使用するため、これらの化学物質に反応しない材質を採用する必要があります。主にPTFE(テフロン)が利用されています。

ウェハキャリア

ウェハーキャリアは、製造したウェハーを搬送するために利用するケースです。静電気の発生、パーティクル(ゴミ)の侵入を防ぐ、衝撃から中身を守るなどの役割があります。搬送にかかる時間やウェハーの品質によって材質が変わってきます。代表的な材質はPTFE、PC、PFAなどです。

 

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