プラスチックやエンプラなどの樹脂を切削加工する際、どうしても発生してしまう「バリ」。試作品の寸法精度が狂ってしまったり、見栄えが悪くなったりと、
製品開発の現場において頭を悩ませる大きな原因の一つですよね。
「なぜバリが出てしまうのか?」「どうすれば綺麗に仕上げられるのか?」と、お困りの設計担当者様や購買担当者様も多いのではないでしょうか。
この記事では、切削加工においてバリが発生する根本的な原因から、樹脂ならではの加工の難しさ、そしてバリを抑えて高精度な試作品を作るための
具体的な対策までを分かりやすく解説します。
- 原因を知るバリは刃物の押し出しや切削抵抗によって発生する
- 樹脂の壁熱で溶けやすく粘性の高い樹脂(PPなど)は特に注意が必要
- プロの対策素材専用の刃物選定と適切な切削条件・仕上げ処理がカギ
切削加工の「バリ」とは?
部品の試作や製造に関わっていると必ず耳にする「バリ」という言葉。まずは、バリがどのようなもので、なぜ発生してしまうのか、その基本的なメカニズムについて確認していきましょう。

バリの定義と発生メカニズム
バリとは、マシニングセンタや旋盤などで素材を切削加工した後に残ってしまう、意図しない不要な突起やギザギザした端材のことです。
刃物(エンドミルなど)を使ってブロック状の素材を削り出す際、素材は刃物によって強い力で押し出されたり、引きちぎられたりします。このとき、
素材が耐えきれずに変形し、加工面のフチや角の領域に押し出されるようにして残ってしまうのがバリの正体です。つまり、素材を「物理的に削って形を作る」という切削加工の性質上、バリの発生を完全にゼロにすることは非常に困難なのです。
バリを放置するリスクと影響
「たかが少しの出っ張り」とバリを放置してしまうと、試作開発において様々なトラブルを引き起こす原因となります。なぜなら、バリがあることで以下のような
重大な影響が出るからです。
【バリによる主な悪影響】
- 寸法精度の低下:設計図通りの寸法が出ず、他の部品と正しく噛み合わなくなります。
- 機能検証への影響:流体解析や動作確認を行う際、バリが抵抗となって正しいテストデータが取得できません。
- 安全性の問題:鋭利なバリが残っていると、組み立て作業時やユーザーが触れた際に怪我をする恐れがあります。
特に、量産前の機能検証モデルにおいては「量産品と同じ性能が出るか」を確かめることが目的のため、バリによる精度の狂いは致命的です。そのため、
発生したバリをいかに確実に取り除くか、あるいは「最初からバリを出さないように加工するか」が、外注先の技術力を測る重要な指標となります。
バリが発生する主な原因と種類
バリを効果的に防ぐためには、「なぜ、どのようなバリが発生しているのか」という根本的な原因を知る必要があります。バリと一言で言っても、
実は発生するメカニズムによっていくつかの種類に分けられます。
| バリの種類 | 発生のタイミング | 主なメカニズム |
|---|---|---|
| ポアソンバリ | 加工中(刃物の側面) | 素材が圧力で横方向に押しつぶされ、はみ出す |
| ロールオーバーバリ | 刃物の抜け際(端部) | 素材が切り取られずに、進行方向へ押し曲げられる |
| ティアバリ(むしりバリ) | 加工中全般 | 素材が引きちぎられるように剥がれる |
ポアソンバリ(切削抵抗)
切削加工中、刃物が素材に押し付けられると、素材には圧縮する力が働きます。このとき、素材が圧力から逃れようとして、加工面の横方向(刃物の進行方向とは
垂直の方向)に押し出されて膨らんでしまう現象が起きます。これが「ポアソンバリ」です。
イメージとしては、柔らかい粘土を上から強く押し付けると、横にムニュッとはみ出すのと同じ原理です。素材の硬さや、刃物を当てる角度などによる「切削抵抗」が大きく関わってきます。
ロールオーバーバリ(押し出し)
もう一つ代表的なのが「ロールオーバーバリ」です。これは、刃物が素材を削り終わる「抜け際(端の部分)」でよく発生します。
端に近づくと素材を支える部分が少なくなるため、刃物が素材をスパッと切り落とす前に、素材が刃物の進む力に負けてペロッと外側へ押し曲げられてしまいます。
切れ味が悪いハサミで紙を切ろうとすると、紙が折れ曲がって刃の間に挟まってしまうのと同じ状態ですね。特にプラスチックなどの樹脂は金属より柔らかいため、
このロールオーバーバリが発生しやすいという特徴があります。
工具の摩耗と切削条件の不備
これらのバリの発生をさらに悪化させる最大の要因が、「工具(刃物)の摩耗」と「不適切な切削条件」です。
刃物のコンディションが仕上がりを左右します
摩耗した古い刃物を使ったり、その素材に対して「回転数」や「送り速度」といった条件が合っていなかったりすると、加工時に無駄な摩擦や抵抗が生まれます。
料理をする際、切れ味の悪い包丁でトマトを切ると、スパッと切れずに潰れて切り口がボロボロになってしまうのと同じです。切削加工においても、
刃物のコンディションと条件設定は、バリの発生に直結する非常に重要なポイントなのです。
加工工程でバリを防ぐ対策方法
バリを完全になくすことは難しくても、加工工程を工夫することで極限まで抑えることは可能です。ここでは、プロの現場で行われている実践的なバリ対策について
解説します。

最適な切削工具の選定
工具選びはバリ対策の基本中の基本です。高精度な試作を手掛ける荒川技研では、「なるべく新品に近い、その素材専用の刃物を使用する」ということを
徹底しています。
コストを抑えるために汎用的な刃物を使い回したり、摩耗した刃物を使い続けたりすると、どうしても切れ味が落ちて素材を引きちぎるような加工になって
しまいます。プラスチックの種類(硬さや粘り気)に合わせて専用設計された、切れ味の鋭いエンドミルを常に良い状態で使用することが、切削抵抗を減らし、バリの発生を根本から抑え込む最大の秘訣なのです。
切削条件の見直し(回転数等)
刃物の選定と同じくらい重要なのが、工作機械の「切削条件」を最適化することです。主軸の回転数、刃物を進める送り速度、切り込み量などを素材の特性に合わせて細かく調整します。
例えば、刃物を進めるスピード(送り速度)が速すぎると、刃物が素材を無理やりむしり取ってしまい、バリが大きくなります。逆に遅すぎても刃物と素材が擦れる
時間が長くなり、摩擦熱で樹脂が溶けてしまう原因になります。この「回転数」と「送り速度」の絶妙なバランスを見極めるのが、加工オペレーターの腕の見せ所と
言えます。
設計段階での工夫と対策
加工現場での工夫だけでなく、図面を描く設計段階からバリを防ぐアプローチも非常に有効です。
部品のエッジ(角)部分にあらかじめ「面取り(C面や角を丸めるR面など)」の指示を入れておくことで、刃物の抜け際で発生しやすいバリを物理的に抑えやすく
なります。設計と加工現場がすり合わせを行うことで、より美しく精度の高い部品を作ることが可能になります。
【加工工程におけるバリ対策の3本柱】
- 刃物:素材専用の新品に近い鋭い刃物を使う
- 条件:回転数や送り速度を素材に合わせて最適化する
- 設計:角部に面取り指示を入れ、バリの逃げ場をなくす
樹脂切削におけるバリ対策の壁
ここまでは切削加工全般におけるバリ対策について触れてきましたが、金属加工とプラスチック(樹脂)加工とでは、バリの性質が大きく異なります。樹脂ならではの特性が、加工の難易度を跳ね上げる「壁」となるのです。
熱で溶けやすい樹脂の特性
樹脂加工において最大の敵となるのが「熱」です。金属に比べて融点が低いプラスチックは、刃物が素材を削る際に発生する摩擦熱によって、削った先からすぐに溶け出してしまいます。
溶けた樹脂が加工面に張り付いたり、そのまま冷えて固まったりすることで、非常に厄介なバリとなって残ります。これを防ぐために、荒川技研の加工現場で特に気を使っているのが「切粉(削りカス)の排出」です。
切粉の滞留が熱をこもらせます
削り取られた高温の切粉が刃物の周りに溜まってしまうと、そこに熱がこもり、素材をさらに溶かしてしまいます。そのため、熱を持った切粉が滞留しないよう
スムーズに排出し、熱を素早く逃がすための高度なノウハウが求められます。
PPなど粘性の高い素材の難しさ
さらに加工者を悩ませるのが、PP(ポリプロピレン)などに代表される「粘性が高く、ネバネバした性質」を持つ素材です。
粘性が高い素材は、刃物を当ててもスパッと切れず、ゴムのように伸びて引きちぎられるような削れ方をします。その結果、加工面に「むしりバリ」が大量に
発生しやすくなります。この粘り気に打ち勝つためには、やはり「刃物のキレ」が絶対条件となります。少しでも刃先が摩耗していると、粘性に負けて綺麗な切断面を作ることができません。
「刃物のキレを極限まで保ち、切粉をスムーズに排出させる」。言葉にするとシンプルですが、これを多様なプラスチックの材質ごとにコントロールできるか
どうかが、試作専門業者の腕の見せ所なのです。
高精度な樹脂試作は荒川技研へ
プラスチック特有の熱や粘性による「バリ」の問題。これをクリアし、寸法通りの美しい試作品を製作するためには、素材に対する深い理解と高度な加工技術が不可欠です。弊社では、プラスチック試作のスペシャリストとして、この壁を乗り越えるノウハウを有しています。
難削材・エンプラ加工のノウハウ
弊社では、PPやアクリルといった汎用樹脂はもちろん、PEEKやPEIなどのスーパーエンジニアリングプラスチック(難削材)の加工にも強みを持っています。
バリを極限まで抑えるため、弊社では前述した「材質に合わせた専用工具の選定」を徹底するだけでなく、加工プログラムにおける「面取り加工」の最適化を
行っております。また、機械による切削工程だけでなく、仕上げ工程においては必要に応じて「サンドブラスト処理」を施すことにより、微細なバリを確実に除去する二段構えの対策を講じています。こうした多角的なアプローチが、高精度な可視化モデルや機能検証モデルの品質を支えています。
最短1日からの小ロット対応
試作開発の現場において、品質と同等に求められるのが「スピード」です。荒川技研では、金型が不要な樹脂切削加工のメリットを最大限に活かし、データ受領から「最短1日」という短納期対応を実現しています。
大手メーカーが敬遠しがちな「1個から50個程度」の小ロット生産に最適化された体制を敷いており、開発サイクルの短期化に貢献します。「素材本来の強度で
テストしたいが、バリによる寸法誤差は許されない」といった高度な要求に対し、確かな技術力とスピードで応え続けています。

