最適な材質選定によるコストダウン

プラスチック材料の選定次第でコストは大きく変わる

プラスチック材料は、金属などに比べてたくさんの材種があるため、選ぶのが大変です。加工先からの意見ばかりを聞いていると、必要以上にコストがかかる材料を使うことになりかねません。かといって、材料費だけで材料を決めてしまうと性能不足で全く使えない製品になってしまう可能性もあります。そうならないためにも、材料をどのような基準をもって選択しているのかをしっかりと理解する必要があります。

コストダウンに最適なプラスチック材料を選定するには、主に下記の2つの側面から検討していく必要があります。

  • 要求する性能から材料を決める
  • 加工方法を考慮して材料を決める
プラスチック材料 コストダウン

「使用に耐えられる強度などの性能から逆算して材料を決めていく手法」と「目的の形状を実現するために適した加工方法から材料を決めていく手法」の2つの側面から材質を決めていく方法があります。

2つのどちらか一方で決めていく場合もありますが、ほとんどの場合で両方の側面から検討していくことになるでしょう。これら2つの手法について詳しく解説していきます。

要求する性能から材料を決める

プラスチック材料を選定する場合、ほとんどの場合において、これだけは満たしておかなければいけないという性能があります。例えば「動作時の衝撃で割れない」「屋外で使用していても劣化しない」「他の部品と滑らかに可動する」などがあります。

製品を使用するのにすぐに壊れていては使用できなくて困ってしまいます。そうならないために、要求する性能を満たした材料を選択する必要があります。しかし、必要以上の性能を持っている材料を選択してしまうと、必要以上に高いプラスチック材料を選んでしまうことになってしまいます。これではコストパフォーマンスは低くなってしまいます。

例えば、スーパーエンジニアリングプラスチックの「PPS(ポリフェニレンサルファイド)」は耐熱性に優れ、200℃以上の温度にも耐えられます。しかし、実際に使用する温度が120℃程度であれば、エンジニアリングプラスチックの「PBT(ポリブチレンテレフタレート)」でも十分に性能を発揮してくれるのです。わざわざ高価なPPSを選ぶ必要はどこにもありません。ここまで極端な例はあまりないかもしれませんが、材料選定でコストダウンできる可能性は大いに有り得るのです。

つまり、コストパフォーマンスを最大にするには「必要な性能を満たした上で材料価格の安いものを選択する」ことが必要になってくるわけです。コストパフォーマンスを最大にするには、プラスチックの性能評価の項目を理解し、必要とする性能がどのくらいなのかシミュレーションする必要があります。

プラスチックの性能評価としては下記のような評価項目があげられます。

  • 機械的強度(衝撃強さ・靭性・摺動性)
  • 耐熱・耐寒性
  • 耐薬品性(酸・アルカリ・有機溶剤など)
  • 耐候性・耐紫外線性
  • 電気的性質

製品にどのようなストレスが掛かるのかを明確にし、そこから逆算して材料選択をすればいいでしょう。しっかりと製品を使用する環境を分析することがコストダウンに繋がるのです。それぞれの項目についての詳細は以前の記事で紹介しています。

加工方法を考慮して材料を決める

プラスチック製品には様々な加工方法があります。材料によっては、材料特性により加工できない場合もあるので、加工方法も考慮して材料を選択する必要があります。

加工方法を考慮しないで材料を決めてしまうと、思った以上に加工費がかさんでしまい、予算オーバーになる場合もあります。性能だけを見て熱硬化性樹脂に決めても、熱を加えて溶かす必要のある射出成形加工はできません。熱硬化性樹脂の場合は、圧縮成形などを利用する必要がありますが、加工コストは射出成形のほうが安くできます。性能だけでなく、加工方法や加工コストともにらめっこしながら材料を選択していくことがとても大切なのです。

材料候補としてあがっているものが、想定している加工方法に適しているか予めチェックしておきましょう。

メーカー指定でもコストが大きく変わるので注意

プラスチック材料にはたくさんの種類がありますが、材料メーカーもたくさんあり、メーカーによって得意な材料、不得意な材料が存在します。

同じプラスチック材料であっても材料メーカーが異なるだけで、価格が大きく違うという事態になる場合もあります。材料メーカーにこだわりを持っていたり、取り寄せた材料カタログから指定してしまったりすると、材料価格が高くなってしまうため、コスト最優先なのであれば、メーカーは指定しないほうが良いでしょう。

同じ材料であってもメーカーによって「耐熱性グレード」や「摺動性グレード」などがある場合とない場合があります。そのような特殊な場合は、特定のメーカーを選択せざるを得ないかもしれませんが、一般的な材料でコストダウンを優先したいのであれば、できる限り材料メーカーにこだわらないことが大切です。

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