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摺動性プラスチックとは?使用用途から材料選びのポイントまで解説

「新しい製品のギアや軸受を設計しているけれど、摩擦に強い樹脂はどれを選べばいいか迷っている…」
「PTFE(テフロン)などの柔らかい難削材を高精度で削って試作してくれる加工会社が見つからない…」

新製品の開発において、部品同士がこすれ合う「摺動(しゅうどう)部」の設計は、製品の寿命や性能を左右する重要なポイントです。最適な「摺動性プラスチック」を選定し、高精度な試作を行うことが開発成功の鍵を握ります。

本記事では、摺動性プラスチックの基礎知識から、設計時のコスト削減のコツ、そして最適な材料選びのポイントまでを分かりやすく解説します。

💡 30秒でわかる!この記事の重要ポイント
  • 基礎知識摺動性プラスチックは自己潤滑性を持ち、摩擦や摩耗に強い設計に不可欠です。
  • 選び方用途(車両ギアや精密部品など)に合わせた材質選定がコストと性能のバランスを決めます。
  • 試作のプロ弊社ならPTFEやPEEKなど難削材の高精度切削や、公差緩和によるコスト削減提案が可能です。

摺動性プラスチックとは?

機械部品や精密機器の内部では、常に部品同士が接触し、動いています。こうした環境下で求められるのが「摺動性プラスチック」です。ここでは、その基本的な性質と、なぜ多くの設計者が金属から樹脂への代替を進めているのかを解説します。

摺動性(自己潤滑)の重要性

摺動性とは、物体が他の物体と接触しながら滑らかに動く性質のことです。摺動性プラスチックの最大の特長は「自己潤滑性」を持っている点にあります。

通常、摩擦を減らすためには潤滑油やグリスが不可欠ですが、自己潤滑性を持つ樹脂を使用すれば、油を差さなくてもスムーズな動きを維持できます。これにより、メンテナンスの手間を大幅に削減できるだけでなく、潤滑油の飛散による周辺部品の汚染を防ぐことができます。特に、クリーンルーム内で使用される半導体製造装置や、衛生面が重視される医療機器、さらには日常的に使われる玩具まで、幅広い分野でこの性質が重宝されています。

金属から樹脂へ代替する利点

従来、摺動部品といえば真鍮やアルミなどの金属が主流でしたが、近年では機能性の高いエンジニアリングプラスチックへの置き換え(樹脂化)が加速しています。その理由は大きく3つあります。

  • 軽量化の実現:樹脂は金属に比べて比重が圧倒的に軽いため、工業用の車両ギアや可動部材の軽量化に直結し、エネルギー効率の向上に貢献します。
  • 耐食性と無潤滑化:金属のように錆びる心配がなく、薬品や水に触れる環境でも安定した性能を発揮します。
  • 騒音の低減:金属同士の接触音(カチャカチャ音)を吸収し、静音性が求められる精密部品において優れたパフォーマンスを発揮します。

このように、金属のデメリットを補いながら独自の強みを発揮できるのが、摺動性プラスチックの魅力です。

摺動性に優れた代表的な樹脂

一口に摺動性プラスチックと言っても、その種類は様々です。用途や求められる耐久性、コストに合わせて適切な材質を選ぶことが、試作や製品開発を成功させる第一歩となります。ここでは、弊社で日常的に切削加工を行っている代表的な材質を、「汎用エンジニアリングプラスチック」と「スーパーエンジニアリングプラスチック」に分けてご紹介します。

汎用エンプラ(POM、PE、MCナイロンなど)

日常的な製品から産業機械まで、最も幅広く使われているのが汎用エンジニアリングプラスチックです。比較的コストが抑えられ、加工性にも優れているため、試作段階で最初に検討されることが多い素材です。

  • POM(ポリアセタール・ジュラコン):自己潤滑性が高く、耐摩耗性や寸法安定性に非常に優れた代表格です。工業用(車両)ギアをはじめ、玩具の内部機構や、高い精度が求められる精密部品の試作において、数多くの加工実績があります。
  • PE(ポリエチレン):特に超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)は、滑りやすさと耐衝撃性が抜群です。ガイドレールや搬送用部品などによく採用されます。
  • MCナイロン:高い機械的強度と自己潤滑性を併せ持ち、金属製ギアの代替として産業機械の可動部などで活躍します。

スーパーエンプラ(PTFE、PEEK、PPSなど)

汎用エンプラでは耐えられない高温環境や、より過酷な薬品にさらされる環境、極めて高い強度が求められる場合には、「スーパーエンジニアリングプラスチック」の出番となります。

  • PTFE(テフロン):プラスチックの中で最高クラスの滑りやすさ(低摩擦係数)と耐薬品性を誇ります。しかし、非常に柔らかく変形しやすいため、削り出して寸法精度を出すのが極めて難しい「難削材」でもあります。
  • PEEK(ポリエーテルエーテルケトン):約260℃という高い連続使用温度と、優れた耐摩耗性を持ちます。過酷な環境下で駆動する車両用部品や半導体製造装置の摺動部などに不可欠な高級素材です。
  • PPS(ポリフェニレンサルファイド):耐熱性と剛性が高く、寸法変化が少ないため、高温下で高い精度が要求される精密部品に適しています。

弊社では、加工が難しいPTFEをはじめ、PEEKやPPSといった難削材の高精度切削にも対応しており、高度な要求スペックを満たす試作を日々手掛けています。

材料選びの重要ポイントと試作時の注意点

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摺動性プラスチックを用いた部品(ギア、軸受、ガイドレールなど)を設計する際、「とりあえず滑りやすいPTFE(テフロン)を選べばいい」というわけではありません。使用環境や相手材、そして「加工コスト」とのバランスを見極めることが重要です。ここでは、材料選びの基本と、弊社がお客様によくアドバイスしている「コスト削減のコツ」を解説します。

摩擦係数やPV値などの基本条件の整理

まずは、部品に求められる物理的な条件を整理します。

  • 摩擦係数と耐摩耗性:どれくらい滑りやすさが必要か(摩擦係数)、そしてどれくらい削れにくいか(耐摩耗性)を確認します。
  • 荷重と速度(PV値):部品にかかる圧力(P:Pressure)と滑り速度(V:Velocity)の掛け合わせである「PV値」は、材料の限界を知るための重要な指標です。限界PV値を超えると、摩擦熱によって樹脂が溶けたり変形したりする恐れがあります。

相手材との相性と使用環境(温度・薬品)

摺動部品は必ず「相手(接触する部品)」が存在します。相手材が金属なのか、あるいは同じ樹脂なのかによって摩耗の進行度合いは大きく変わります。また、最高で何度になる環境で使用されるのか(耐熱性)、油や特殊な薬品に触れるのか(耐薬品性)といった環境要因も、汎用エンプラ(POM等)で十分なのか、スーパーエンプラ(PEEK等)が必要なのかを分ける重要な基準となります。

試作のプロが教える!設計最適化とコスト削減のコツ

実は、お客様が摺動部品の試作で失敗しやすい(無駄なコストをかけてしまう)最大のポイントは、「過剰品質な設計」と「加工しにくい形状」にあります。弊社では、図面通りにただ削るだけでなく、加工会社の視点から以下のようなコスト削減のご提案を行っています。

弊社が提案するコストダウン3つのポイント

  • ① 最小R(角の丸み)の調整: ポケット加工などの内側の角(最小R)が小さすぎると、極小の刃物(エンドミル)で少しずつ削る必要があり、加工時間が大幅に伸びてコストが跳ね上がります。機能に影響のない範囲で「Rを大きく(刃物の逃げを作る)」するご提案をします。
  • ② 公差の緩和: 摺動部という理由で、不必要な箇所まで厳しい寸法公差(±0.01mmなど)を指定していませんか?厳しすぎる公差は歩留まりを悪化させます。本当に精度が必要な部分とそうでない部分を見極め、公差を緩和することでコストと納期を圧縮できます。
  • ③ 最適な材料の再選定: 「念のため」と高価なPEEKや加工が難しいPTFEを選んでいても、実際の使用環境(温度やPV値)をヒアリングすると、より安価で加工しやすいPOMやMCナイロンで十分なケースが多々あります。

このように、用途やコストに応じた最適な材質選定や形状変更の提案ができるのが、長年工業用製品の加工実績を積んできた弊社の強みです。

摺動部品の試作は荒川技研へ

摺動性プラスチックを用いた試作開発において、材料の選定から加工精度の確保まで、設計者が直面する課題は少なくありません。特に、自動車産業や産業機械、医療機器などで使われる工業用製品においては、試作段階でのデータが量産時の成否を大きく左右します。弊社は、30年以上にわたるプラスチック切削加工のノウハウを活かし、お客様の開発を強力にサポートいたします。

量産材料での高精度切削(POM、PE、MCナイロン等)

3Dプリンター(光造形)による試作も普及していますが、機能部品である摺動部の評価には不向きな場合があります。なぜなら、光造形用の特殊樹脂では、量産時に実際に使用されるPOMやPE、MCナイロンなどの「本来の物性(摩擦係数や摩耗量、強度)」を正確にテストできないからです。

弊社では、マシニングセンタやNC旋盤を用い、ブロック状の樹脂素材から直接削り出す「切削加工」を得意としています。量産と同じ材料を使用することで、耐摩耗試験や動作テストにおいて、極めて信頼性の高いデータ(真正性)を取得することが可能です。

難削材(PTFE、PEEK、PPS等)の加工ノウハウ

スーパーエンプラであるPEEKやPPSは、その硬さや材料費の高さから加工ミスが許されません。また、PTFE(テフロン)に至っては、プラスチック最高クラスの滑りやすさを持つ反面、非常に柔らかく変形しやすいため、寸法精度を出すのが極めて困難な「難削材」として知られています。

弊社では、これらの難削材に対しても、最適な切削条件(刃物の選定、回転数、送り速度など)を熟知しています。工業用(車両)ギアや高度な精密部品など、他社では加工が難しいとされる要求にも応えられる技術基盤を持っています。

最短1日からのスピード対応とプロの提案力

開発サイクルの短期化が求められる現代において、スピードは強力な武器です。弊社では、金型を必要としない切削加工の強みを活かし、データ受領から最短1日での納品(※工場の稼働状況や材料在庫による)に対応しています。1個から50個程度の小ロット生産に最適化された体制で、スピーディーに検証モデルをお届けします。

また、前述した「最小Rの調整」や「公差の緩和」、「用途やコストに応じた最適な材質選定のご提案」など、単なる「下請け」ではなく、共に課題を解決する「開発パートナー」として伴走します。主に工業用製品に使用される部品の加工実績が数多くございますので、材質選定や形状変更でお悩みでしたら、まずは一度ご相談ください。

 
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