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樹脂加工は難しい?「透明・難削材」の特性やポイントを徹底解説

「金属部品と同じ感覚で設計図を描いたら、試作品が反ってしまった」
「指定した公差通りに仕上がらないと言われた」
「ドリル加工の穴が溶けて変形してしまった」

製品開発の現場において、金属加工の経験が豊富なエンジニアの方でも、初めて本格的な「樹脂加工(プラスチック切削)」に取り組む際、このようなトラブルに直面することは珍しくありません。

樹脂は金属に比べて柔らかいから加工も簡単だろう、と思われがちですが、実は「精度を出す」という意味では難易度が高い素材なのです。
💡 30秒でわかる!この記事の重要ポイント
  • 熱問題樹脂は熱伝導率が低く、加工熱で「溶け」や「寸法変化」が起きやすい
  • 設計金属と同じ公差指定はNG。切削ならではの「肉抜き省略」等がコストダウンの鍵
  • 解決策難形状や透明モデルは、マシニング×エアロラップ技術を持つ専門業者へ

樹脂加工が「難しい」と言われる3つの物理的理由

鉄やアルミなどの金属加工に慣れている設計者様からすると、プラスチックは「軽くて柔らかい素材」に見えるかもしれません。
しかし、その「柔らかさ」と「熱への弱さ」こそが、高精度な加工を阻む最大の壁となります。なぜ樹脂加工は難しいのか、物理的な特性から紐解いてみましょう。

1. 熱伝導率の低さが招く「熱変形」と「溶け」

樹脂加工において最も警戒すべき敵は「熱」です。
金属は熱伝導率が高いため、切削時に発生した摩擦熱を素材全体に逃がしたり、切削油(クーラント)で冷却したりすることが一般的です。

一方、プラスチックは断熱材に使われるほど熱伝導率が極めて低い素材です。そのため、刃物と素材が擦れて発生した「加工熱」が逃げ場を失い、加工点に蓄積されてしまいます。

よくある失敗トラブル

特にドリルによる穴あけ加工などでは、切粉の排出が悪くなると内部に熱がこもり、「ドリルで熱を持って樹脂が溶けてしまう」という現象が多発します。溶けた樹脂が刃物に再付着し、穴の精度を狂わせるだけでなく、工具破損の原因にもなります。

2. 熱膨張による寸法の逸脱

「加工直後は寸法通りだったのに、検査室に持っていったら公差外になっていた」
このような経験はないでしょうか?

樹脂は金属に比べて線膨張係数(熱膨張率)が非常に大きい素材です。加工中の摩擦熱で素材自体が温まると、その分だけ膨張します。その「膨張した状態」で削り、常温に戻って冷えると、今度は収縮して寸法が小さくなってしまいます。

この「熱膨張による寸法の逸脱」を防ぐためには、素材を加工室の温度に馴染ませる温度管理や、荒加工と仕上げ加工の間に冷却時間を設けるなど、金属加工とは異なる繊細な配慮が求められます。

3. 加工後に変形する「残留応力」の厄介さ

3つ目の理由は、目に見えない力である「残留応力(内部応力)」です。
プラスチック素材の内部には、成形時や加工時にかかった力が歪みとして蓄積されています。切削加工によって表面を削り取ると、内部の力のバランスが崩れ、解放された応力が「反り(そり)」や「ねじれ」となって現れます。

特に薄肉形状や、左右非対称な形状を削り出す場合、加工中には問題なくても、時間の経過とともにジワジワと変形が進むことがあります。これを防ぐためには、材料選定の知識に加え、適切なアニール処理(熱処理)などのノウハウが不可欠です。

設計段階で回避!加工トラブルを防ぐ3つの設計ポイント

樹脂加工のコストや品質は、実は「図面の描き方」ひとつで大きく変わります。
特に、普段は金型成形品(大量生産品)の設計をしている方が、試作品(切削品)を依頼する場合、「成形用の設計ルール」をそのまま適用してしまうと、かえって加工費が高くなったり、精度が出にくくなったりするケースがあります。

1. 「射出成形」の常識を捨てる(肉抜き・抜きテーパーの省略)

金型を使った射出成形では、樹脂の冷却時間を短縮したり、「ヒケ(表面の窪み)」を防いだりするために、厚肉部分を減らす「肉抜き」が必須とされます。また、金型から製品を取り出しやすくするための「抜きテーパー(勾配)」も欠かせません。

しかし、ブロック材から削り出す切削加工においては、これらは逆効果になることがあります。

切削加工における「肉抜き」のデメリット
  • 加工時間増削る量が増えれば増えるほど、機械の稼働時間が長くなり、コストが跳ね上がります。
  • 剛性低下無理に肉を抜くと、ワーク(素材)の強度が下がり、加工中の振動(ビビリ)や変形の原因になります。

切削試作においては、機能上どうしても軽量化が必要な場合を除き、「肉抜きの省略」「抜きテーパーの省略(ストレート形状)」をご検討ください。これだけで加工工程がシンプルになり、短納期・低コスト化につながります。

2. 隅アール(R)の選定と「仕上げ粗さ」の緩和

図面の隅(コーナー部分)に「ピン角(直角)」を指定していませんか?
切削加工は回転する刃物(エンドミル)を使用するため、内側の角には必ず刃物の半径分の「R(アール)」が残ります。ピン角を実現するには、Rの逃がしや手加工による作業が必要となり、コストが増加します。

特段の干渉がない限り、「最小Rの選定」(使用する工具径に合わせたR設定)をお願いしています。また、必要以上に平滑な面粗度(ツルツルな面)を指示すると、加工時間が大幅に伸びます。シール面や摺動面以外は、「仕上げ粗さの緩和」を許容していただくことで、コストを抑えつつ十分な機能を果たす試作品が完成します。

3. 金属並みの「厳しすぎる公差」を見直す

前述の通り、樹脂は温度変化や吸湿によって寸法が動きやすい素材です。
金属部品と同じ感覚で「±0.01mm」といった厳しい公差(許容差)を全体に指定されることがありますが、樹脂でこれを保証するのは非常に高難易度になります。

もちろん、重要な嵌合(はめあい)部分には厳密な精度を出しますが、それ以外の箇所については、樹脂の特性を考慮した現実的な公差設定をご相談させていただければと思います。

特に難易度が高い「透明・難削材」加工の技術的壁

樹脂加工の中でも、特に高度な技術と経験が求められるのが「可視化モデル(透明化)」「スーパーエンジニアリングプラスチック(難削材)」の加工です。
これらの分野では、一般的な汎用樹脂の加工ノウハウだけでは対応できず、多くの試作メーカーが受注を敬遠する傾向にあります。

弊社では、自動車部品の流体解析や、医療機器の微細部品などで数多くの実績を持っています。

1. 透明樹脂(アクリル・PC)の白濁と内部応力割れ

アクリル(PMMA)やポリカーボネート(PC)などの透明樹脂は、切削した直後は表面が白く濁ってしまいます(白化現象)。これを透明に戻すには研磨(磨き)が必要ですが、複雑な形状や微細な溝の奥まで手作業で磨くことは物理的に困難です。

また、透明樹脂は薬品や熱応力に敏感で、無理な力がかかると「ソルベントクラック(ケミカルクラック)」と呼ばれる微細なヒビ割れが発生しやすく、加工中の破損リスクが常に付きまといます。

2. 流体解析用「可視化モデル」に求められる精度

流体解析(CFD検証)などに用いられる可視化モデルでは、単に「透明であること」だけでなく、「歪みのない透明性」が求められます。表面が波打っていたり、内部が曇っていたりすると、正確な流体の挙動を観察できません。

弊社では、職人による手磨きに加え、「エアロラップ(Aero Lap)」と呼ばれる特殊研磨技術を導入しています。

エアロラップ工法のメリット
  • 内部も透明工具が届かない複雑な形状でも、均一に鏡面仕上げが可能。
  • 形状維持手磨きのような「ダレ(角が丸くなる現象)」が起きにくく、寸法精度を維持したまま透明化できる。

3. スーパーエンプラ(PEEK等)は「工程分割」で反りを制す

PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などのスーパーエンジニアリングプラスチックは、耐熱性・耐薬品性に優れる反面、材料価格が非常に高く、加工難易度もトップクラスです。
硬い素材であるため刃物の摩耗が激しく、加工時の発熱による反りも発生しやすい特徴があります。

私たちは、こうした難削材を扱う際、一度に削りきることはしません。
「工程数をあえて増やして反り対策を行う」ことが、急がば回れで最も確実な近道だからです。

必要に応じて「アニール処理(焼き鈍し)」を行って内部応力を除去。その後、荒加工→仕上げ加工を行うことで、反りを極限まで抑えた高精度な部品を提供しています。

「難しい試作」を1個から実現できる理由

「他社で断られてしまった」「納期が間に合わない」「もっと透明度が欲しい」
そんな切実な課題を抱える設計者様こそ、お気軽にご相談ください。

1. 多品種小ロットに特化。「1個」からの製作に対応

大手加工メーカーでは敬遠されがちな「1個だけ」「数個だけ」という極小ロットの試作こそ、私たちの得意分野です。
専用治具を必要とする量産とは異なり、汎用治具と職人の技術を組み合わせることで、初期費用(イニシャルコスト)を抑えつつ、必要な数だけをスピーディーに製作します。

「とりあえず形状確認用に1つ欲しい」「展示会用に5つだけ最高品質で作りたい」といったご要望に、柔軟にお応えします。

2. 独自のノウハウで難削材の「クセ」を見抜く

樹脂は生き物のように変化します。同じ材質でも、メーカーやグレード、あるいはその日の気温や湿度によって加工条件(回転数、送り速度)を微調整する必要があります。
私たちは創業以来、プラスチック加工一筋で技術を磨いてきました。

マニュアル通りの加工ではなく、素材ごとの「熱の持ちやすさ」や「反りの出やすさ」を熟知しているからこそ、PEEKやガラス入り樹脂などの難削材でも、安定した品質でお届けすることが可能です。

3. 失敗できない開発試作にこそ「プロの技術提案」を

ただ図面通りに削るだけが仕事ではありません。
「この用途なら、PEEKよりも安価なPPSで十分かもしれません」「ここのRを少し大きくすれば、加工費を抑えられます」といった、専門家視点での材質選定や形状変更のご提案(VA/VE)を積極的に行っています。

設計者様の意図を汲み取り、機能とコストのバランスが取れた「最適な試作品」を一緒に作り上げます。

まとめ:樹脂加工の「難しい」を解決するパートナーとして

樹脂加工が難しい理由は、主に以下の3点となります。

🔧 樹脂加工の難所をおさらい
  • 熱問題熱伝導率が低く、加工熱で溶けや寸法変化が起きやすい。
  • 残留応力加工後の「反り」や「クラック」を防ぐアニール処理等のノウハウが必須。
  • 設計金属と同じ公差や肉抜きはNG。樹脂特有の設計ルールが必要。

「図面通りの物ができない」「透明度が足りない」とお悩みの際は、ぜひ一度、弊社にお声がけください。
エアロラップによる可視化技術と、難削材への深い知見で、皆様の開発プロジェクトを強力にサポートいたします。

お見積りや技術的なご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
図面がない段階でのご相談も大歓迎です。

 
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