樹脂加工方法の種類とは? 切削加工と成形加工それぞれの長所と短所

樹脂加工は製品開発において重要な役割を果たします。樹脂の種類や目的・用途によって、適切な加工方法が異なります。この記事では、「切削加工」や「成形加工」といった樹脂加工方法の種類とその概要を解説した上で、それぞれの長所と短所、樹脂に合わせた適用、用途の違いを比較します。

樹脂加工の種類とは

樹脂加工の技術は多岐にわたりますが、「切削加工」と「成形加工」に大別できます。さらに、それらの加工法の中から、製品の形状や用途に応じて最適な手法を選ぶことが重要です。ここでは、樹脂加工の各種類について概要を解説します。

樹脂切削加工

樹脂切削加工は、樹脂材料を特定の形状に加工するために用いられる技術です。専用の機械と工具を用いて材料の不要な部分を除去します。この加工法は、精密さや複雑な形状の要求に柔軟に対応できるのが特徴です。

樹脂切削加工フライス

切削加工の基本プロセス

樹脂切削加工では、初めに樹脂製品の仕様や加工性を考慮し、製品形状と加工工程を決定します。NC機械を使用する場合は、刃物の動きや加工パターンの設定も必要です。次に、選定された樹脂材料を加工の寸法に適合するよう準備し、使用する加工機械にセットアップします。加工時には適切な刃物の選択と精密な位置決めをおこない、樹脂の切削作業を進めます。刃物の状態や加工の品質を定期的にチェックするなど、作業中の細かな調整も欠かせません。加工品はバリ取りや表面処理が施され、品質検査・適合検査をクリアすれば完成です。

主要な切削加工方法

フライス加工

フライス加工は、回転する刃を使用して樹脂材料を削る方法です。平面や溝、複雑な形状の加工に適しており、小ロット生産や試作品製作に多く用いられます。刃の形状や種類を変えることで、多様なデザインの実現が可能です。汎用フライス盤やマシニングセンタなどを使用します。

旋盤加工

旋盤加工は、材料を回転させながら刃で削ることで、円形や円筒形の製品を製造します。特に円形の部品や連続した曲面を削り出すのに適していて、高精度な加工も可能です。汎用旋盤や卓上旋盤、NC旋盤などが用いられます。

樹脂成形加工

樹脂成形加工は、熱や圧力を利用して樹脂を特定の形状に成形する技術です。この加工法は大量生産に適しており、さまざまな樹脂製品の製造に幅広く用いられています。

射出成形

成形加工の基本プロセス

成形加工の基本プロセスは、樹脂を加熱・溶解(可塑化)し、金型に流し込んだあとに冷却・圧縮して固化することです。樹脂の種類や製品の形状に応じて、加熱温度や圧力、冷却時間などを調整する必要があります。均一な品質を保つためには、精密な温度管理と成形条件の制御が重要です。

主要な成形加工方法

射出成形(インジェクション成形)

射出成形は、溶融した樹脂を型に注入し、冷却固化させて製品を作る方法です。複雑な形状や精密な部品の製造に適しており、大量生産にも対応できます。効率的な製造プロセスとして、自動車部品や家電製品など幅広い分野で採用されている加工方法です。

射出成形(インジェクション成形)

射出成形は、溶融した樹脂を型に注入し、冷却固化させて製品を作る方法です。複雑な形状や精密な部品の製造に適しており、大量生産にも対応できます。効率的な製造プロセスとして、自動車部品や家電製品など幅広い分野で採用されている加工方法です。

ブロー成形

ブロー成形は、ボトルや容器のような空洞のある製品を製造する場合によく用いられます。溶融樹脂を型内に入れて空気を吹き込み、型の形状に合わせて膨らませる成形方法です。均一な厚みを持った樹脂製品を大量生産した場合に向いています。

押出成形

押出成形は、連続的な形状の製品を製造するのに適した方法です。溶融樹脂を特定の型から押し出すことで、パイプやチューブ、プロファイル形状など、長さに制限のない製品を作ることができます。特殊な形状にも対応し、生産効率も高い成形技術です。

圧縮成形

圧縮成形ではシート状の成形材料を加熱した金型に入れ、軟化した状態で圧縮し、目的の形状に成形します。古くからある加工方法でコストパフォーマンスが良く、少量生産にも適しています。熱硬化性プラスチックの加工においては、基本となる成形技術です。

真空注型

真空注型では金型の代わりにシリコン型を使用し、真空下で液状樹脂を成形します。低コストで10〜100個程度の小ロット製品を効率よく製造することが可能です。短納期で製作できる反面、金型よりも耐久度が劣るため、主に試作品などの少量生産で活用されています。

その他の樹脂加工方法

切削加工や成形加工とは異なる樹脂加工方法が選択されることもあります。ここでは、その他の樹脂加工の種類として「3Dプリンタ加工」「曲げ加工」「接着加工」を説明します。

3Dプリンタ加工

3Dプリンタ加工は、デジタルデータを基に樹脂を層状に積み重ねて物体を造形する技術です。コンピュータで作成した立体データを忠実に再現できることから、複雑な形状や中空構造を持つ製品を作りたい場合に適しています。設計の自由度が高く短時間での製造も可能なため、マスターモデルやカスタムメイド製品の製作にも活用されます。

曲げ加工(ベンディング加工)

曲げ加工では、樹脂シートをパイプヒーターや電気炉などで加熱してやわらかくし、特定の形状に曲げてから冷却・固化します。ディスプレイカバーや医療機器の部品など、樹脂を曲線的な形状へ加工するのに適した方法です。加熱と冷却の管理が品質に大きく影響するため、正確な温度設定と迅速な形状加工が求められます。

接着加工

接着加工は、別々の樹脂部品を接着剤で接合する方法と、樹脂材料の一部を溶かして接着させる方法があります。複数のパーツを組み合わせて一つの製品を作る場合や、異なる材質を組み合わせる場合に用いられる技術です。接着剤の選定や接着面処理の巧拙によって、接着箇所の強度や耐久性に差が出ます。

樹脂切削加工と樹脂成形加工の比較

切削加工と成形加工には、それぞれ長所と短所があります。両者の特徴を比較し、使用する樹脂の種類や製品の用途に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。

切削加工の長所と短所

樹脂切削加工のメリットとデメリットは以下のとおりです。

切削加工の長所・メリット

切削加工は、複雑な製品形状にも高い寸法精度で対応できます。小ロット生産や試作品・カスタム製品の製作にも適しているほか、設計の変更も比較的容易です。扱える樹脂材料にも制限がほぼありません。ただし、難削材には高度な加工技術が求められます。

切削加工の短所・デメリット

切削加工は製造コストが比較的高くなるため、大量生産にはあまり向いていません。複雑な形状や高い精度に対応できますが、それだけ加工時間が長くなる傾向があります。また、切削による材料の損失や工具の摩耗も考慮しなければなりません。

成形加工の長所と短所

樹脂成形加工のメリットとデメリットは以下のとおりです。

成形加工の長所・メリット

成形加工では型を用いるため、製造コストを抑えた大量生産が可能です。安定的・均一的な品質を得やすく、ある程度複雑な形状にも対応できます。

成形加工の短所・デメリット

ほとんどの成形加工では、金型製作に高い初期コストがかかります。基本的に、真空注型以外の成形加工は少量生産に不向きです。また、形状やサイズの変更が難しく、対応可能な樹脂素材にも制限があります。

樹脂の種類による加工方法の適用

使用する樹脂の種類は、適切な加工方法を適用する際の重要な要素です。ABS樹脂のように成形加工(射出成形)と切削加工の両方が適用できる材料もありますが、ポリ塩化ビニルやMCナイロン、テフロン(PTFE)、その他いくつかのエンプラ(エンジニアリングプラスチック)は成形加工に適していません。製品の用途や必要な特性に応じて、最適な樹脂と加工方法を選定することが重要です。

切削加工と成形加工の用途の違い

切削加工は、複雑で高精度な加工が求められる場合、もしくはプロトタイプ製作や追加工をおこないたい場合に選択されます。一方、成形加工は一定の品質で大量生産をする場合に採用されるケースが多いです。製品の要求仕様、生産量、コスト面を考慮し、用途に合わせて最適な加工方法を選びましょう。

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