テフロン(フッ素樹脂)の種類と特徴を解説! テフロン加工の原理とは?

テフロンといえば、「テフロン加工のフライパン」のような調理器具を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。テフロンコーティングにより、汚れや焦げが付きにくくて手入れしやすいのが特徴ですね。コーティングだけでなく、テフロンは様々な機能特性を持つ高機能樹脂です。そのためテフロンは様々な部品に利用されています。テフロンは一般的に「フッ素樹脂」を意味しますが、実はフッ素樹脂には9つの種類があります。種類ごとの特徴を知っておけばテフロンの選定や加工に役立つでしょう。今回はテフロンの基礎知識から、種類と特徴までを解説します。

テフロン切削加工品例

テフロンフッ素樹脂(PTFE)

寸法:76×122×32t

フッ素樹脂(PTFE)

寸法:40×70×30t

フッ素樹脂(PTFE)

寸法:30×30×17t

テフロンとは

テフロンはフッ素樹脂の商品名で、現在はケマーズ社が商標権を保持しています。ここでは、テフロンの歴史や主な特性、用途について解説します。

テフロンの歴史

1938年のアメリカ、デュポン社では、冷媒研究としてテトラフルオロエチレンの実験がおこなわれていました。その実験に携わっていたブランケット博士は、あるときテトラフルオロエチレンが自己重合した白い固体を発見したのです。これこそがテフロンの代名詞ともいえるPTFEで、その後の調査で優れた特性を持つ樹脂素材であることが確認されました。

デュポン社は1941年にPTFEを特許登録し、1945年にはテフロン(Teflon)として商標登録します。日本へ伝わったのは1950年頃で、生産技術の発展とともに国内のテフロン需要も高まっていきました。また、2015年には、デュポン社から分社・独立したケマーズ社へテフロン™ (Teflon™)の商標が移管されています。

テフロン(フッ素樹脂)の主な特性

テフロンの主な特性として、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐薬品性といった使用環境や使用状況等への耐性が挙げられます。テフロンはさらに、非粘着性や滑り性、絶縁性にも優れるため、非常に用途が多い樹脂です。

耐熱性

調理器具にテフロン加工が施されることからも、耐熱性に優れた樹脂であることは理解しやすいでしょう。耐熱温度は種類にもよりますが、たとえばPTFEの融点は約327℃、連続使用温度は260℃前後です。

耐寒性

一般に合成樹脂(プラスチック)は温度変化に弱いものが多く、高温だけでなく低温環境でも脆くなったり割れたりします。一方、テフロンは耐寒温度にも優れている樹脂で、-250℃程度まで安定した素材性能を発揮可能です。

耐候性

テフロンは温度変化に強いだけでなく、日光や湿度からの影響もほとんど受けません。撥水性や酸化のしにくさなど、屋外での長期使用に耐えうる特性を持っています。

耐薬品性

酸やアルカリに強く、ほとんどの有機薬品に対して安定した性質を維持します。ただし、テフロンの種類によっては、薬品ごとの膨潤や溶解への耐性が異なる場合があります。たとえばPCTFEやPVDFは、PTFEと比べて化学薬品への耐性が低いです。

非粘着性

テフロンは液体に対する接触角が大きいため、濡れにくくて粘着しづらい(離型性が良い)樹脂です。ほとんどの物質が固着することができず、もし付着しても簡単にはがせます。テフロン製品の汚れにくさと洗浄しやすさは、この特性によるものです。

低摩擦性

テフロンの摩擦係数は非常に低く、表面がとても滑りやすい素材です。参考までに、テフロンの摩擦係数をほかの物質と比較した表を掲載しておきます。

物質名摩擦係数(乾燥摩擦係数)※
テフロン(フッ素樹脂)0.04
カーボン0.21
ポリスチレン0.30
アルミニウム0.36
軟鋼0.40
0.40
ガラス0.51

※軟鋼との間に発生する摩擦係数

電気絶縁性

テフロンは無極性高分子の物質であることから、絶縁性に優れると同時に、誘電率や比誘電率が小さく、誘電正接も低いといった特性を持っています。ただし、静電気を帯電しやすい性質も持ち合わせていることに注意が必要です。

テフロン(フッ素樹脂)の主な用途

テフロンは優れた特性を持っていることから、用途が非常に多彩です。テフロンの種類によって細かく使い分けがなされています。

コーティング

軸受け

シートライニング材

ベルト

シート

チューブ

ホース

ロッド

ネジシール用生テープ

パイプライナー

継ぎ手

ボルト

ライニング

キャップ

ポンプ

電線被覆材

電気部品

半導体成形材料

化学装置部品

電気絶縁部品

パッキン

ガスケット

バルブ

機械部品

耐食用部品

のぞき窓

耐食包装フィルム

医薬品輸送バッグ

高純度試薬用容器

テフロンの種類と特徴

テフロンには以下の9種があります。

PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)

和名:四フッ化エチレン樹脂

PTFEはフッ素と炭素のみで構成される結晶性樹脂です。耐薬品性が高く、摩擦係数は固体素材として最小クラスです。PTFEは熱溶融しないため、成形では粉末冶金に近い方法がとられます。フッ素樹脂の中で生産量・使用量が最も多く「テフロンといえばPTFEを指している」といっても過言ではないほどです。

PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)

和名:四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂

PFAは、PTFEに匹敵する特性を持たせつつ、加工性の改善がなされています。射出成形や押出成形などの溶融加工・成形が可能です。化学薬品と接触しても変成しないため、半導体分野の成形材料に応用されています

FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)

和名:四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂

FEPはPFAと同様に優れた加工性を持ち、射出成形や押出成形が可能です。連続使用温度が200℃程度であるため耐熱性はPTFE・PFAに劣りますが、耐寒性や耐候性、電気絶縁性などの他の特性については遜色ありません。

ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー)

和名:四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂

ETFEはテトラフルオロエチレンとエチレン共重合体からなり、溶融加工・成形が可能なフッ素樹脂です。耐薬品性や耐食性、電気絶縁性だけでなく、機械的特性にも秀でています。

PVDF(ポリビニリデンフルオライド)

和名:二フッ化ビニリデン樹脂

PVDFはフッ素と炭素、水素で構成されるフッ素樹脂で、機械的強度に優れています。ただし融点が160℃と比較的低く、アミンやケトン、エステルなどへの耐薬品性に難があります。

PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)

和名:三フッ化塩化エチレン樹脂

PCTFEはフッ素と塩素からなり、流動性が高く射出成形が可能です。水蒸気透過性が非常に小さいため、保湿した状態で運搬・保存するための包装フィルムなどに適しています。ただし、耐薬品性はPTFEより少し劣ることに留意しておきましょう。

ECTFE(エチレン・クロロトリフルオロエチレンコポリマー)

和名:三フッ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂

機械的特性や電気絶縁性、耐薬品性といった強みがあり、加工性にも優れるフッ素樹脂です。非燃焼性や耐放射線性も持つため、特殊な環境で使用する機械・機材への用途があります。

TFE/PDD(テトラフルオロエチレン/パーフルオロジオキソールコポリマー)

和名:四フッ化エチレン/パーフルオロジオキシソール共重合樹脂

TFE/PDDは非晶性のフッ素樹脂です。透明度が高く屈折率は低いため、光学機器の反射防止膜や保護層などに活用されています。吸湿性があり、特定の溶剤に可溶性を示すといった特徴も持っています。

PVF(ポリビニルフルオライド)

和名:フッ化ビニル樹脂

PVFは成形が難しいフッ素樹脂ですが、特に機械的特性と耐候性に優れています。建物の外装・内装建材、屋根の表面材、太陽電池などの高機能フィルムとして利用されています。

荒川技研は樹脂加工のスペシャリストです。切削加工による精密モデル製作のほか、真空注型や光造形、簡易型成形などを承っています。また、1個から小ロットの多品種試作にも対応可能です。超高分子量ポリエチレンの加工でお困りなら、ぜひ荒川技研へご相談ください。

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