身の回りにある樹脂製品の多くは、色鮮やかで様々な色味をしています。しかし、樹脂素材そのままでは、ABS樹脂ならクリーム色、ポリプロピレン樹脂なら白半透明、ポリカーボネート樹脂なら無色透明とあまり個性がありません。樹脂製品のほとんどが、染料や顔料によって着色されています。樹脂製品の着色方法とそのメリット・デメリットとともに紹介していきます。
着色方法の種類とメリット・デメリット
樹脂製品に着色する方法は、大きく分けると「内部着色」と「外部着色」に分けられます。
簡単に言うと、内部着色は顔料などをプラスチックに練り込む手法で、外部着色は表面に塗料や印刷等をする方法です。
内部着色の方法
- 着色ペレット
- マスターバッチ着色
- ドライカラー着色
- リキッドカラー着色
外部着色の方法
- プラスチック塗装
- プラスチックメッキ
- 印刷
- 着色ペレット
最も一般的なのが着色ペレットです。着色コンパウンドとも呼ばれます。指定の樹脂に染料や顔料を加えたもので、着色メーカーが混合し、販売しているものを利用する方法です。
専門メーカーが着色工程を行うため、最も発色がよく、色ムラの少ないというメリットがあります。また、すでに着色されている材料を使うため、現場で混合する必要がありません。
一方デメリットは、他の着色方法に比べて価格が高いことがあげられます。
マスターバッチ着色
マスターバッチ着色は、着色ペレットよりも高濃度で染料・顔料を混ぜた材料を、現場でナチュラル材(無着色の材料)と混ぜ合わせ着色する手法を指します。混合はタンブラーと呼ばれる機械で行います。ナチュラル材に対してのマスターバッチ材の混合比率は、おおよそ3~10%程度が一般的とされています。
マスターバッチ着色では、後述のドライカラーとは違い粉末状ではないため、成形機やタンブラー等を汚してしまう心配がありません。そのため、ドライカラーに比べて清掃の時間を短縮できるというメリットがあげられます。
また、ナチュラル材と配合して使うため、着色ペレットのように保管に場所をとりすぎる心配もありません。
着色ペレットに比べると材料価格は安いものの、後述のドライカラーと比べると材料価格は高いというデメリットがあります。
ドライカラー着色
ドライカラー着色は、粉末状の顔料をナチュラル材に混ぜ、タンブラーで混ぜるなどして行う着色方法です。
ドライカラー着色は、非常に安価に着色できるメリットがあります。また、粉末であるため、現場で濃淡を調整することもできるので、柔軟性が高い着色方法と言えるでしょう。
反面、製造ロット毎の色ムラが発生しやすいというデメリットもあります。粉末状のため、混合時に機械に付着して清掃に手間が掛かる問題点もあります。
リキッドカラー着色
リキッドカラー着色は、その名の通り液体の着色剤をナチュラル材に混ぜる手法です。粉末、液体という差はありますが、メリットとデメリットはドライカラーとほとんど同じです。
塗装
樹脂の種類にもよりますが、樹脂は塗装することができます。
- ウレタン塗装
- ラッカー塗装
- アクリル塗装
など、塗装だけでも様々な種類があります。
塗装のメリットは、内部着色では実現の難しい色味を出せる点があります。例えば、パールなどのラメが入った色味の場合、成形ではどうしても樹脂の流れによって色ムラができてしまいますが、ナチュラル材にパール塗装をすることで色ムラを限りなく少なくすることができます。高級感が必要な製品や大型の製品には塗装がよく用いられます。
樹脂に塗装する場合、材質によっては密着性が悪い場合があるので、プライマーなどで下処理をする必要がある点はデメリットといえるでしょう。また、内部着色に比べてコストがかなり高くなる点もデメリットにあげられます。コストよりも意匠性を優先する場合に利用したい着色の手法です。
プラスチックメッキ
樹脂は基本的に電気を通さない非導体ですが、一部の樹脂では、表面に特殊な処理を施すことで金属の電気メッキがを施せます。ABS、PC、PAなどの材料へのメッキ加工が一般的です。光沢のあるクロムメッキが最も一般的ですが、その他にもゴールド、黒色、サテン調など様々なメッキができます。
プラスチックメッキの主な利用用途では、自動車のグリルがあげられます。樹脂の軽量性や価格と金属の高級感がある光沢を両立させられる点は、プラスチックメッキの非常に優れたメリットと言えるでしょう。
プラスチックメッキの多くは、劣化すると剥がれてきてしまうので、その点には注意が必要です。
印刷
着色とは少し趣が変わってしまいますが、文字やテクスチャなどを樹脂製品の表面に施したいのであれば印刷も視野に入れておくと良いでしょう。印刷にはパッド印刷、ホットスタンプ印刷、インクジェット印刷など様々な手法があります。
印刷のメリットは、複数の色を組み合わせた表現が可能である点と、細かい文字や絵などの表現が可能という点です。
印刷は複雑な表現が可能な反面、平面に近い場所にしか印刷できないというデメリットがあります。そのため、複雑な形状をしている製品の加工には適しません。