金属加工と樹脂加工の違い(材質変更時の注意点)

樹脂と金属では根本的な性質が大きく異なります。樹脂、金属それぞれの性質を大まかに把握すれば、材質の選択がしやすくなります。樹脂、金属の特徴を項目ごとに、また加工方法の違いについても解説していきます。

強度

樹脂と金属では強度が大きく異なり、硬度や靭性、耐衝撃性など、基本的には金属のほうが上回ります。

金属は強度に優れる一方で、加工時の負荷が高くなりやすい特徴も。例えば、金属の切削加工では、刃物の摩耗やカケが発生しやすく、加工者を悩ませます。刃の形状は樹脂用のものは先端が鋭く切れ味重視なのに対し、金属用のものは刃が分厚く強度重視になっているのが特徴です。

また、金属は常温でも塑性変形しやすく、大きな力を加えても割れにくいという特徴があります。そのため、板金に金型で圧力をかけ形状を整えるプレス加工がしばしば用いられます。プレス加工は低コストで強度等も得やすい加工方法であるため、非常に広く普及しています。また、金属の場合、プレス加工などで外部から力を加えることで、金属の組織が密になり強度が増すというのも大きな特徴です。

反対に樹脂は、常温ではほとんど塑性変形しないため、常温でプレス加工をしても砕けてしまいます。そのため、プレス加工は板材の型抜き以外の用途では用いられません。このような特徴があることから、樹脂は熱を加えて流動性をもたせてから塑性変形させるインジェクション成形やブロー成形が主流です。

金属に比べ強度に劣る樹脂ですが、樹脂製品の強度を高めたい場合などは、ガラス繊維や炭素繊維を樹脂に混ぜ込み利用する場合があります。そうすることで、樹脂の軽量さと強度の両方を確保できるのです。自動車のバンパーはガラス繊維を混ぜ込んだ樹脂を利用しています。

耐熱性

耐熱性に関しては、樹脂よりも金属のほうが勝っています。一般的に工業で使われる金属は融点が400~1500℃前後であるのに対し、樹脂は100~200℃前後となっておりその差は歴然です。

樹脂は融点が低い反面、溶かして金型へ材料を流し込み成形するインジェクション成形での加工が広く普及しています。融点が低いことで、金型へのダメージも少なく、省エネルギーで製品の加工ができます。私達が普段目にする樹脂製品のほとんどが、このインジェクション成形を用いて作られたものです。

金属も溶かして金型で成形するダイカストがありますが、利用されるのは融点の比較的低いアルミや亜鉛となっています。高温での鋳造となると金型へのダメージが大きくなってしまい、金型寿命が極端に短くなってしまいます。そのため、融点の高い金属である銅や鉄などは、砂や石膏で使い捨ての金型を使った鋳造が用いられます。

切削加工の場合、ある1点の加工に時間を掛けすぎてしまうと摩擦などの影響で熱が溜まります。樹脂の場合、熱が溜まりすぎると材料が溶けてしまう場合も。金属でも熱が溜まりすぎるのはよくありませんが、樹脂の場合は特に気をつける必要があります。

熱膨張性

熱膨張性は加工後の精度に大きく影響する部分です。熱膨張性が高いのは樹脂で、この熱膨張性の高さがゆえに、あらゆる加工において金属よりも仕上がり精度が低くなる傾向にあります。

熱膨張性が高いと、加工中に熱が加わると膨張し、加工が終わってしばらくすると大きく縮みます。そのため、樹脂や金属を溶かして加工するインジェクション成形の場合は、材料の厚みが分厚い場所は表面に凹みができるほど縮んでしまいます。

切削加工においても、切削時に発生する熱が原因で製品が反ってしまうことがあります。そのため、熟練の切削加工の技術者は、切削時に発生する熱をいかに逃がすかを考えて加工方法を検討しています。

導電性

導電性は電気を通すかどうかを示す言葉です。金属は導電性に優れており電気を通します。反対に樹脂は電気を通しません。ただし、炭素繊維などを練り込み、導電性をもたせた導電性樹脂も流通はしています。

金属は溶接や溶断といった電気を使って金属を瞬間的に溶かす加工が可能です。また、ブロック状の材料を切断する際に利用されるワイヤーカットも導電性を利用した加工方法です。

金属が電気を通す一方で、樹脂は基本的に電気を通しません。そのため、溶接や溶断、ワイヤーカットなどの加工は行われません。絶縁が必要な場合は、材料に積極的に樹脂が選ばれます。

耐薬品性

ステンレス等の例外はあるものの、一般的には金属は酸化(錆)に弱い傾向があります。そのため、表面の酸化反応を防ぐために、酸化に強い金属をメッキしたり、塗装をしたりとなんらかの表面処理を行うのが一般的です。

反対に樹脂は酸化はするものの、金属ほどの極端な反応をすることは少ないため、一般的には酸化防止の目的で表面処理がされるケースはほとんどありません。ただし、長期間、日光にさらされる環境下の場合は、酸化が進み材料がもろくなってしまう場合があります。そのような場合は、酸化防止剤を樹脂材に添加するのが一般的です。

酸化には強い樹脂ですが、シンナー等の有機溶剤には全般的に弱くなっています。ただし、スーパーエンプラと呼ばれる樹脂材の中には有機溶剤やその他の薬品に強いものもあります。

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