主な樹脂製品の試作方法
樹脂製品を試作する場合によく用いられる加工方法は、下記表の3つが主流です。加工方法ごとに、コストパフォーマンスを高められるロット数や、加工精度の違いがあります。樹脂製品の試作を検討する場合、まずは必要な製品の数や精度で、加工方法を絞り込んでいくこことをおすすめします。
加工方法 | コスト | 精度 | 納期 | 材料種類 | 形状自由度 | おすすめロット数 |
切削加工 | ▲ | ◉ | ● | ◉ | ▲ | 1~50 |
真空注型 | ◉ | ▲ | ▲ | ▲ | ● | 10〜100 |
3Dプリンター | ● | ▲ | ● | ▲ | ◉ | 1〜10 |
(光造形) |
各試作方法の特徴
さらに細かい加工方法の特徴について紹介していきます。
切削加工
切削加工は、旋盤やマシニングセンタといった工作機械で刃物を使って樹脂を削り、造形していく手法です。円柱状の加工であれば旋盤を使い、それ以外の形状はマシニングセンタで加工します。形状によっては旋盤やマシニングセンタを組み合わせて加工する場合もあります。切削加工は精度や強度を重視する場合に最適です。
切削加工のメリット
- 強度が高い
- 精度が高い
- 材料選択の自由度が高い
切削加工を用いた場合、ブロック状や棒状の材料から削っていきます。そのため、材料の密度が高く、量産時と同等の実用的な強度を確保できる点が魅力です。加工精度も非常に高いため、歯車や機構部品などで強度テストをする場合に最適な試作方法といえます。POM、ABS、PC、MCナイロン、PEI、PPS、PTFEやガラス繊維入りの樹脂材などに対応でき、材料選択の自由度の高さも大きな強みと言えるでしょう。
切削加工のデメリット
- 中ロット以上のコストメリットがあまりない
- 形状によっては加工できない
一から材料を削り出していく必要があるため、ロット数が増えてもあまりコストが下がらないデメリットがあります。このことから、1~50個程度の小ロットの試作に最適です。また、加工に使用する刃物が製品に干渉してしまう形状の場合、上手く加工できず、削り残しが発生します。そのため、溝が深すぎるような製品などの場合は切削加工では対応できない場合があります。
切削加工なら既存部品への追加工も
切削加工は、既存の部品へ追加工できるのが特徴です。既存の部品に穴をあけたり、キー溝を掘ったりするだけの試作品を作る場合は、切削加工での追加工を利用すると、一から試作を作るよりも大幅に加工費を節約できる場合があります。
切削加工の加工事例
材質:66N+GF30(B) 寸法:83×35×50t | 材質:PC材 寸法:54×54×12t |
切削加工についてのさらに詳しい情報はこちらのページで紹介しています。
https://a-giken.co.jp/machining
真空注型
真空注型は、製品をシリコンゴムで型取り、その中に樹脂を流し込んで加工する方法です。レジンキャストとも呼ばれます。樹脂を流し込む際にシリコン型を真空状態にするので、注型時に気泡が入る心配がありません。そのため非常に細かい形状などを再現できるのが特徴です。
元となる製品がない場合は、切削加工や光造形などでマスターを製作する必要がありますが、数十~100程度の生産において高いコストパフォーマンスを発揮します。精度よりも個数を優先する場合に最適な手法です。
真空注型のメリット
- 形状の自由度が高い
- 透明度のある製品を加工できる
真空注型は、柔らかいシリコンゴムで型を作るため、多少型を抜きにくい形状であっても無理やり抜くことが可能です。そのため、金型を使った加工では製造できない形状も加工できる場合があります。マスター製品の表面処理の再現できるため、磨かれた製品であれば透明度の高い製品も製造できます。光沢表面だけでなく、シボなどの表面処理の再現も可能です。
真空注型のデメリット
- 材料バリエーションが少ない
- 20個程度で型の更新が必要
- 精度がやや劣る
真空注型では、注型する材料はウレタンやエポキシなどの熱硬化性樹脂に限定されます。そのため、一般的なプラスチック材料を再現した「相当材料」の加工に限定されるので、強度試験などを行う場合には適しません。また、柔らかいシリコンゴムを型とするため、20個程度の製造で型が傷み、更新する必要があります。真空注型での加工精度は一般的に±0.1~±0.5程度となり、切削加工に比べるとやや劣ります。
真空注型の加工事例
完成品: 12面体 マスターモデル:透明アクリル サイズ:92 x 95 x 8t ゴム型:シリコンゴム 注型品:透明ウレタン 着色透明品 (赤色、黄緑色、黄色) 注型品2次加工:マスキング後シルク印刷(黒色 白色) |
真空注型についてのさらに詳しい情報はこちらのページで紹介しています。
https://a-giken.co.jp/casting
3Dプリンター(光造形)
3Dプリンターは比較的最近の技術で、製品の形状をデータ上で薄く輪切りにし、一層一層積み重ねて作っていく手法全般を指します。
3Dプリンターの中には、
- 紫外線硬化させて積層する「光造形」
- 粉末を焼き付けて製造する「SLS方式(粉末焼結積層造形)」
- フィラメントを溶かして製造する「FDM方式(熱溶融積層造形)」
などがあげられますが、今回紹介するのは光造形タイプのものです。
3Dプリンター(光造形)のメリット
- 3Dデータがあれば加工できる
- 複雑な形状でも加工しやすい
- 表面がなめらか
3Dプリンターでの加工では、3Dのモデリングデータをほとんどそのまま再現してくれるので、技術的問題をあまり気にしなくていいメリットがあります。複雑な形状でも再現できるため、切削加工や真空注型では対応できないような形状の製品試作に最適です。最近の3Dプリンターの精度はどんどん上がっており、表面の積層痕もほとんど気にならないレベルになってきています。
3Dプリンター(光造形)のデメリット
- 加工時間が長い
- 材料バリエーションが少ない
- 紫外線劣化しやすい
3Dプリンターは、1層1層を積み重ねて加工していく必要があるため、加工に長い時間がかかってしまいます。1つの部品を製造する場合はあまり問題にはなりませんが、ロットが多くなると時間が掛かりすぎるため、真空注型などと合わせて利用したほうがいいでしょう。紫外線硬化する樹脂を使うため、材料バリエーションが少ないというのもデメリットです。また、紫外線硬化する分、紫外線劣化の速度も早いので、屋外での利用を前提とした試作品の製造には向きません。
3Dプリンター(光造形)の加工事例
材料:TSR-829 高透明タイプ(ABSライク)を使用しての造形品 |
3Dプリンター(光造形)についてのさらに詳しい情報はこちらのページで紹介しています。
https://a-giken.co.jp/stereolithography