荒川技研ではスーパーエンプラをはじめとする高機能材、難加工材の切削に積極的に取り組んでいます。
PEI(ポリエーテルイミド)とは
PEI(ポリエーテルイミド)は、高温下でも優れた強度を持つスーパーエンジニアリングプラスチックで、非結晶性のプラスチック材料となっています。比重は1.27、連続使用温度は170℃です。ナチュラルな色味は琥珀色をしており、他のプラスチック材料とは趣が異なります。
イミド結合とエーテル結合の両方を持っていることから、ポリエーテルイミドと呼ばれています。PEIは1980年代初頭にアメリカのゼネラル・エレクトリック社が開発しました。ゼネラル・エレクトリック社では「ULTEM(ウルテム)」という商品名で販売されていました。工業や医療での利用が多く、あまり身近な場面では目にすることのないプラスチック材料ですが、近年では少しずつ利用用途の範囲が広がってきています。
耐熱用可視化製品:PEI
エアロラップをかけることで、PEIも透明にできます。素材独自の色は消せませんが、通常以上に透明にできます。
PEIは耐熱温度が170℃以上ですので、アクリルやポリカーボネートでは熱的に対応できない実験にも使えます。
PEI(ポリエーテルイミド)の切削の注意点
PEIは硬度が高く、一般的なプラスチック材料よりも送り速度や切削速度は控えめに設定する必要があります。ノッチ感度が高く、角部を切削すると応力集中が発生し、欠けや割れが発生してしまいます。コーナーRをしっかりとり、応力を分散させるような工夫が必要です。コーナーRをとることが難しい場合は、できる限り切り込み量や送り速度を控えることが大切です。
PEIの特徴
PEI(ポリエーテルイミド)はスーパーエンプラの一種です。エンプラよりもさらに高機能な特性を持っています。150度という高温下での利用が可能で、紫外線にも強く燃えにくい性質があります。高精度加工に対応し、電気絶縁性にも優れています。
メリット
- 耐熱性・高温時の機械的強度が高い
- 耐熱水性が高い
- 耐紫外線性・耐放射線性が高い
- 電気絶縁性が高い
- アルカリ・酸に強い
- 寸法安定性が高い
デメリット
- 有機溶剤に弱い
- 耐摩擦性が低い
- 角部が欠けやすい
PEIは、高温下であっても機械的強度が落ちにくく、最大で170℃の温度環境でも強度を維持します。さらに、湿度に対しても強く、高温の蒸気で滅菌作業が行われる医療製品などの使用にも耐えられます。耐放射線性、耐紫外線性も高いので放射線医療などに使われる製品用途にも最適な特徴を兼ね備えています。
電気絶縁性も高く、広い周波数域と温度域で安定した絶縁性能を発揮してくれます。非結晶性のプラスチック材料は一般的に酸やアルカリには弱い特性を持ちますが、PEIは非結晶性のプラスチック材料にもかかわらず、塩素化炭化水素などの一部を除く薬品に対して安定した強度を維持します。
PEIは寸法安定性が高く、切削加工、成形加工のどちらでも高い精度で加工が可能です。プラスチック材料で精密性を高めたい場合において、PEIは積極的に採用されています。溶融時の流動性も高いので、成形時の流れもよく、成形加工に向いています。
PEIは非結晶性の中では優れているものの、有機溶剤にはあまり強くありません。ガソリンやアルコールには耐えますが、その他の有機溶剤には弱いです。
機械的強度には優れているものの、耐摩擦性が低く、摺動性が求められるような製品材料としては適しません。また、ノッチ感度が高く、製品の角部や薄肉部に衝撃や力がかかると欠けたり、割れたりする可能性があります。
PEI切削加工サンプル
PEI(ポリエーテルイミド)の利用用途
PEIがよく使われる場面は、
- 自動車や航空機のエンジン・キャブレーター部品
- 半導体産業
- 食品・医療産業
- 電機・電子部品産業
などがあげられます。
耐熱性と強度が求められる場合や高温スチームがかかる環境下での耐久性が求められる場合などでの利用が主です。また、電気絶縁性が求められる電子や半導体関連の部品にもPEIはよく利用されます。(アクリルやポリカーボネートでは熱的に対応できない実験にも使えます。)
最近では、PEIの軽量性と強度からメガネフレームとしても利用されるようになってきています。柔軟性と形状記憶性、軽量さから掛け心地の面で徐々に人気が上昇しています。
また、溶融時の流動性の高さと精度の高さからFDM(熱溶解積層方式)の3Dプリンタの材料としても利用されています。