PP(ポリプロピレン)は、さまざまな特性に優れたプラスチック素材です。安価で加工しやすいことから、食品容器や医療機器、自動車部品など多くの産業分野で使用されています。荒川技研では汎用材質からスーパーエンプラまで幅広い材質に加工実績とノウハウがあります。

PPヒンジ付ケース
※開いた状態
材質:PP(N)
寸法:145×110×14H
PPヒンジ付きケース
※閉じた状態
材質:PP(N)
寸法:145×55×17H
PPヒンジケース
PPヒンジ付きケース
※開いた状態
材質:PP(N)
寸法:145×110×14H
PP 閉じた状態
PPヒンジ付きケース
※閉じた状態
材質:PP(N)
寸法:80×35×10H
※開いた状態
材質:PP(N)
寸法:80×70×7H
PPヒンジ付きケース
※開いた状態
材質:PP(N)
寸法:80×70×7H

PPとは

PP(ポリプロピレン)は、プロピレン(C3H6)を重合して得られる熱可塑性樹脂です。構成物質によって、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーの3種類に分類されます。

軽量ながら高い強度を持ち、耐熱性や耐薬品性、加工性に優れています。リサイクル性も高く、環境に配慮した樹脂素材といえるでしょう。PPは4大汎用プラスチック※のひとつで、日用品から半導体製造装置部品まで幅広い用途があり、現代の産業に欠かせません。

※PP、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)

PPを切削加工するときの注意点

PPの切削加工では、次の3点に注意します。

①加工時の熱管理

PPを切削加工する際には、摩擦熱によって素材が柔らかくなったり溶融したりする可能性があります。加工精度を保つために、加工中の温度上昇を抑えることが必要です。冷却液を使用して断続的に冷却しながら切削することで、過度な温度上昇を防げます。また、適切な切削速度と送り速度を設定することも加工時の熱管理に有効です。

②切削条件の設定

PPは強度があるため、一定の切削速度が必要です。しかし、速すぎると切削抵抗が大きくなって摩擦熱が発生し、素材が溶融する原因となります。また、切削抵抗を抑えるには、工具の切れ角や逃げ角の調整も重要です。切削条件を最適化することでバリや変形も防ぐことができ、精度の高い仕上がりを実現できます。

③切削工具の選定

PPの強度が高いとはいえ、あくまでプラスチックであるため、専用の工具を使用する必要があります。適切な切削工具を使用しないと、加工精度が著しく低下することに注意が必要です。例えば、刃物の切れ味が悪ければ、材料が摩擦熱で溶融したり、加工部分にバリが生じやすくなったりします。シャープな刃先を持つ工具を選び、定期的にメンテナンスすることで、安定した加工品質を維持できます。

PPの特徴・特性

PPの特徴は、以下の特性によって決定づけられています。

  • 強度
    PPは結晶化度が高く、引っ張り強度や圧縮強度、衝撃強度に優れます。PPの引っ張り強度は31〜41MPaで高密度PE(23〜31MPa)よりも高く、耐久性を求められる用途に適しています。
  • 透明性
    PPは光を透過するため、成形品は半透明です。中身が見えることから、食品保存容器などに適しています。透明化剤の添加によって結晶構造を微細化すれば、さらに透明度を高めることが可能です。
  • 軽量性
    PPの比重は0.93〜0.96で、水に浮くほど軽量です。プラスチックの中でもトップクラスに軽く、製品の軽量化に寄与します。金属の代替素材としても広く利用されています。
  • 耐熱性
    PPは熱可塑性樹脂の中では比較的耐熱性が高く、120〜130℃程度まで使用できます。特にPPF(フィラー入りPP)容器は、温度が上がりやすい油分を含む食品でも電子レンジ加熱が可能です。
  • 耐薬品性
    PPは酸・アルカリに強く、油類やガス類にも耐性があり、食品加工や理化学用途に適しています。ただし、高温環境では一部の有機溶剤に溶けやすくなるため、使用条件には注意が必要です。
  • 加工性
    PPには柔軟性があり、射出成形・押出成形・中空成形など多様な加工方法に対応します。切削加工も可能ですが、熱による反りや歪みが発生しやすいため、適切な加工条件の設定が重要です。
  • 電気絶縁性
    PPはほとんど電気を通しません。体積抵抗率は1016 Ω・cmより大きく、PEやPSと同程度に導電性が低いプラスチックです。その一方で帯電しやすいため、静電気対策を考慮する必要があります。

PPのメリット

PPには多くの優れた特性があり、使用するメリットとして表面の滑らかさや傷のつきにくさ、生産コストの安さ、衛生性の高さが挙げられます。これらの特性により、PPは幅広い産業分野で重要な役割を果たしています。

表面が滑らかで傷がつきにくい

PPの表面は非常に滑らかで、傷がつきにくい特性を持っています。これは、PPの分子鎖が規則正しく配列され、緻密な結晶構造を形成しているためです。適度な硬度と弾性があり、外部からの圧力にも強く、凹みにくいのも特徴です。表面の美観や耐久性が求められる製品に適しており、食品容器や家電製品の外装部品などに活用されています。

安価なため大量生産に適している

PPは日本で最も多く製造されているプラスチック素材のひとつであり、原料コストが安いです。安さに加えて、射出成形や押出成形など幅広い成形方法に対応できることから、大量生産に適した樹脂材料として利用されています。PPを活用した包装材料や日用品などが市場へ安価で提供されています。

衛生的で生体適合性にも優れている

PPは化学的に安定しており、酸やアルカリにさらされても劣化しにくい特徴があります。また、吸水性が極めて低く、細菌やカビの繁殖を抑制する効果があるため衛生的です。こういった特性から食品衛生法に適合するプラスチックであり、タッパーやトレーなどの食品容器に広く採用されています。さらに、生体適合性にも優れており、医療機器や衛生用品など、人体に接触する製品にも利用されています。

PPのデメリット

PPは優れたプラスチック素材ですが、いくつかの弱点もあります。特に耐候性が低く、長期間の屋外使用には適していません。また、耐水性と化学的安定性の高さゆえに、PPの接着や塗装、印刷は難しいとされています。ここでは、PPの主なデメリットについて解説します。

屋外使用には向かない

PPは紫外線に弱く、日光に晒されると劣化します。強度が低下し、割れや変形が発生しやすくなるため、屋外での長期使用には向いていません。ただし、紫外線吸収剤やカーボンブラックを添加することで耐候性を向上させることは可能です。塗装やコーティングで紫外線対策を施す方法もありますが、PPは塗装が難しいため適切な下処理が必要となります。

接着や塗装・印刷が難しい

PPはよく水を弾くだけでなく、化学的にも安定しているため、接着剤や塗料が密着しにくい特徴があります。接着や塗装、印刷を施す際には、事前に表面の下処理が必要です。一般的には、プライマー処理やフレーム処理をおこないます。特に屋外でPPを使用する場合は、塗膜による紫外線保護が有効です。

PPの利用用途

PPは多様な分野で幅広く利用されています。以下は、分野別の代表的な用途例です。

  • 自動車分野
    バンパーフェイシア、バックドアアウター、フェンダー、インパネ(インストルメントパネル)、ドアトリム
  • 産業資材分野
    コンテナ、パレット、半導体ウエハ搬送容器
  • 食品容器分野
    電子レンジ対応容器、加熱殺菌対応容器、食品包装
  • 医療分野
    注射器シリンジ、医療用保管容器
  • 繊維分野
    マスク、紙おむつ、不織布製品
  • 家電製品
    食器洗い機、洗濯機、コーヒーメーカー、ミキサー
  • 日用品・雑貨
    家具、スーツケース、アイスクーラー、プランター、衣装ケース、ごみ箱、バケツ
  • その他
    電線ケーブルや光ファイバーの被覆、建築・建設資材、PPフィルム
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