生産効率の向上が求められる製造現場では、自動化のためにロボットの需要が高まっています。 そんなロボット部品には、樹脂材料の採用が増え続けているのが特徴です。
従来では金属を使用していた部品であっても、軽量化やコストダウンなどのニーズに応えるため、樹脂材料を利用するケースが増えています。産業用ロボットでどのような性能を求められるのかや、どのような材料が利用されているのかをご紹介します。
産業用ロボットで要求される機能性
産業用ロボットでは、多くの場合、次のような性能が求められます。
- 軽量性
- 機械的強度
- 摺動性・耐摩耗性
- 量産加工性
産業用ロボットは素早い動作が求められる場合が多く、金属材料の重量では目的の動作速度を達成できないケースが増えてきています。比重の軽い樹脂材料を採用することでこの問題点が解決されるという場合も多くあります。
しかし、樹脂材料では強度が足りないという問題もありました。そこで活躍を見せているのがエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックのような高性能樹脂です。これらの高性能樹脂の登場により、ロボット産業での樹脂材料が盛んに利用されるようになりました。
ロボットは機械的動作を行う場合が多く、回転運動や直線運動での摩擦が生じる箇所に利用される場合が多いです。そのため、それらの繰り返しの動作に耐えられる摺動性や耐摩耗性が求められます。
また、大量生産が求められるロボットに利用される部品であれば、射出成形などの量産性に優れた加工に適した材質である必要があります。
産業用ロボットで利用される代表的な材質と製品
産業用ロボットでは、用途によって様々な樹脂材料が利用されています。すべてを紹介するのはできませんが、ロボット産業で特によく利用されている樹脂材料を紹介していきましょう。それぞれの樹脂材料がどのような製品として活躍しているのかについてもいくつか紹介していきます。
POM(ポリアセタール)
POMは摺動性に特に優れたエンジニアリングプラスチックです。自己潤滑性があり、潤滑油などを加えなくても安定した摺動性を持っています。寸法安定性と機械的強度においても優れた性能を発揮するため、精度と耐久性が求められるベアリング、ギア、カムなどの機械部品に採用されています。
POMは結晶性の樹脂のため、ナチュラルカラーは乳白色となっています。そのため透明性が求められる場合には適しません。また、酸化指数が高いため発火しやすく、引火の恐れがあるような場所では利用されません。
PA66(ナイロン66)
PA66は代表的なナイロン系樹脂で、PA6よりも耐熱性や機械的強度に優れたエンジニアリングプラスチックです。摺動性に優れ、機械的強度も優れていることからPOMと同じようにギアなどによく利用されます。さらに機械的強度が求められるシーンで利用される場合は、ガラス繊維を充填するケースも珍しくありません。
POMにはない利点として、食品衛生法に適しているという点があげられます。そのため、食品に直接触れるような場所であっても利用できるので、食品加工ロボットなどでも活躍しています。
ナイロン素材全般に言えることですが、ナイロンは吸水性が大きく、湿度によって寸法変化を生じやすいため、あまり精度が求められる用途には適しません。
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)
PEEKは圧倒的な耐熱性と機械的強度を誇るのが特徴です。連続使用温度が240~250℃となっており、高温下で高い強度が求められる場合でも利用できるプラスチック材料となっています。炭素繊維を充填することでさらに高温下での機械的強度があがります。
アクチュエーターやギア、ベアリングなどの用途で主に利用されています。アルミニウム部品の代替部品としても採用されるケースの多い材質です。
PA66などと同じく、ガラス繊維やカーボン繊維を添加し、機械的強度を高めて使用されるケースもよくあります。
濃硫酸に侵されるというデメリットがあるくらいで、大きな欠点のない樹脂素材ではありますが、優れた性能を持っている反面、価格が高価で用途は限定されています。
PC(ポリカーボネート)
機械的強度に優れ、透明性が非常に高いという特徴を持った材質がPCです。機械的強度の中でも、耐衝撃性に特に優れており、衝撃が加わるような場合でも使用しやすい材質となっています。
汎用エンジニアリングプラスチックでは、唯一、透明な材質となっています。ロボットには、内部の可視性が求められるケースも珍しくありません。そのような部品で主に採用されるのがPCです。ディスプレイなどのカバー、可視性が求められる部品には大抵の場合でPCが利用されています。
衝撃には強い一方で、疲労には弱くなっています。繰り返し力が加わるような場所では、徐々にクラックが入るため、そのような用途には適していません。