比重が高い樹脂と低い樹脂|種類・特徴・用途を解説

樹脂の比重は、材料選定において重要な指標の一つです。高比重の樹脂は耐薬品性や耐熱性にも優れていることが多く、低比重の樹脂は製品の軽量化に貢献します。高比重樹脂としてはPTFEやPVDFなどのフッ素樹脂が代表的であり、低比重樹脂にはTPXやPEなどが挙げられます。この記事では、高比重樹脂と低比重樹脂の種類や特徴、用途について詳しく解説します。

樹脂の比重とは

樹脂の比重とは、「ある物質の密度」を「同体積の標準物質(水)の密度」との相対値で表したものです。水の質量を1としたときに、その何倍になるかがすぐに把握できる指標といえます。樹脂の比重は材料選定の重要な要素であり、製品設計の際に考慮されます。

樹脂の比重

比重の定義

比重とは、ある体積を占める物質の質量を、同じ体積の基準物質(通常は水)の質量で割った値のことです。例えば、水の比重は1であり、それより軽い(質量が小さい)物質の比重は1未満、重い(質量が大きい)物質の比重は1を超える値となります。プラスチックの比重の平均は1.1程度といわれており、最も比重が大きいフッ素樹脂でも2.15前後です。この値は、軽量な金属の代表格であるアルミニウムの2.7よりも小さく、鉄(7.2)と比べると3分の1未満の値となっています。

比重と密度はよく似ており、値だけならほぼ同じ(厳密には等しくない)ですが、両者の定義は異なります。密度は単位体積あたりの質量を意味し、g/cm3やkg/m3などの単位を用います。一方、比重は水の密度との相対値であるため、単位はありません。

樹脂材料における比重の重要性

樹脂の比重は、材料の選定や設計において欠かせない基準です。軽量な樹脂は、自動車や航空機部品など、軽量化が求められる分野で活躍します。一方で、比重の高い樹脂は耐熱性や耐薬品性も持ち合わせていることが多く、厳しい環境下での用途に適しています。比重とともに材料の特性やコストのバランスを検討することで、製品の性能向上や製造効率の向上が図れるでしょう。

比重の高い樹脂(高比重樹脂)

比重の高い樹脂は、高密度による優れた耐熱性や耐薬品性が特徴で、特殊用途に幅広く利用されています。具体的な種類と用途について解説します。

高比重樹脂の種類|特徴と用途

ここでは、FEP、PTFE、PFA、PCTFE、PVDFといった高比重のフッ素樹脂を紹介します。

高比重樹脂の種類比重
PTFE(ポリテトラフロロエチレン)2.14〜2.20
PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)2.10〜2.20
FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)2.15~2.17
PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)2.12~2.17
PVDF(ポリフッ化ビニリデン)1.75〜1.78

PTFE(ポリテトラフロロエチレン)

PTFEは「テフロン」としてよく知られる、比重が2.14〜2.20のフッ素樹脂です。非常に優れた耐熱性と耐薬品性を持ち、自己潤滑性も高いため、摺動部品やシール材、化学プラントのライニング材として利用されています。また、-250℃から260℃という広い温度範囲で使用可能であることから、医療や食品加工の分野でも重要な素材です。さらに、絶縁性が高いことから電気部品にも用いられます。

PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)

PCTFEも比重が2.10〜2.20と高く、常温の機械的特性と低温での寸法安定性が特徴です。優れた強度とガスバリア性を持つため、特殊な用途で広く活用されています。化学プラントのシール材や医薬品用フィルム、冷凍装置部品などに利用されます。さらに、耐候性や耐放射線性も持っているため、航空宇宙産業でも採用されています。

FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)

FEPの比重は2.15~2.17です。PTFEやPFAほどの耐熱性はありませんが、化学的安定性が高く、腐食性の強い化学薬品にも耐えることができます。また、表面が滑らかで非粘着性があるため、電線の被覆材や耐熱ホース、半導体製造装置などで広く利用されています。透明性もあり、フィルムなどの光学用途にも適しています。

PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)

PFAは比重が2.12~2.17のフッ素樹脂で、PTFEに匹敵する高い耐熱性と耐薬品性を備えています。非粘着性や低摩擦性のほか、電気的特性にも優れており、半導体製造の配管やタンクライニングにも適した素材です。また、フィルムのような薄い成形品にすると無色透明になるため、光学用途にも適します。溶融加工も可能で、射出成形や押出し成形が比較的容易なのも特徴です。

PVDF(ポリフッ化ビニリデン)

PVDFの比重は1.75〜1.78で、フッ素樹脂の中では低めですが、プラスチック全体で見れば高比重樹脂の水準です。引張り強さと圧縮強さが優秀で、耐候性や耐薬品性も備えているため、過酷な使用環境にも耐えます。加工性も良く、配管材やバルブ部品、フィルター材、化学装置部品などに広く使用されています。

比重の低い樹脂(低比重樹脂)

比重の低い樹脂は、軽量化が求められる分野で活躍します。特に自動車部品や梱包材などにおいて、代替素材や低コスト材料としてのニーズが大きいです。

低比重樹脂の種類|特徴と用途

ここでは、TPXやPE、UHMW-PE、EVA、PPといった低比重樹脂を解説します。

低比重樹脂の種類比重
TPX(ポリメチルペンテン)0.83
低密度PE(低密度ポリエチレン)0.91〜0.92
UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)0.92〜0.94
EVA(エチレン酢酸ビニル)0.95
PP(ポリプロピレン)0.93〜0.96
高密度PE(低密度ポリエチレン)0.94〜0.97

PMP(ポリメチルペンテン)(TPX®)

PMPは、比重が約0.83と非常に軽量な樹脂です。高い透明性と耐熱性、耐薬品性を兼ね備えており、医療機器や理化学器具の製造に利用されることが多いです。また、食品衛生上の安全性にも優れているため、食品容器・包装材としても採用されています。流動性が良く、射出成形にも対応可能です。

PE(ポリエチレン)

低密度PEの比重は0.91〜0.92、高密度PEの比重は0.94〜0.97であり、軽量性と柔軟性に優れています。耐薬品性が高く、食品包装材やパイプ、タンクなどの製造に利用される汎用プラスチックです。耐衝撃性があり、電気絶縁性にも優れることから、ケーブル被覆材としても使用されています。低コストでリサイクル可能な点も、PEの強みといえるでしょう。

UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)

UHMW-PEは、PEの分子量を非常に大きくしたエンジニアリングプラスチックです。比重が0.92〜0.94と軽量である上に、耐摩耗性と耐衝撃性が非常に高いため、スライド部品やギア、搬送装置の部品に使用されています。また、耐薬品性にも優れており、化学プラントや食品工場でも活用されています。UHMW-PEは低温には強いですが、最高使用温度は80℃程度と低いので、高温環境には不向きです。

EVA(エチレン酢酸ビニル)

EVAは、比重が約0.95で、柔軟性と弾力性に優れた樹脂です。靴底やスポーツ用品、マット、断熱材、緩衝材、目地材などに利用されます。耐寒性が高いので低温環境下でも割れにくく、成形加工が容易なことから、さまざまな製品に採用されています。ただし、耐熱性はあまり高くないため、高温環境での使用には注意が必要です。

PP(ポリプロピレン)

PPは比重が0.93〜0.96と軽いだけでなく、剛性と耐熱性にも優れる汎用プラスチックです。食品容器や自動車の内装部品、家電製品の外装材として幅広く使用されています。また、生体適合性が高く、医療機器にも適しています。熱可塑性も優秀で、射出成形やブロー成形など多様な製造方法に対応できるのが魅力です。

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